年老いた漁師のドキュメンタリーを観ているみたい!?小説『老人と海』

こんにちは。山内健輔です。

多くの人が一度は聞いたことがある小説『老人と海』
著者のヘミングウェイはアメリカの作家です。

1952年に書かれた作品なので、だいぶ古い作品ですね。
私が初めて読んだのはたぶん中学生のころ。

夏休みの課題図書のなかに含まれていました。
なぜ、読んだのかというと、

短かったから!

今では読書を苦にしなくなったものの、当時はやっぱりマンガの方が楽しくて、手っ取り早く読めそうな短い本を選んだのを覚えています。

ただ、読んでみると意外におもしろくって、ドキドキしながら読み終えていました。

そして、40歳を超えてから読むと、またひと味違った読み心地になるんです。

今回は、ヘミングウェイ『老人と海』を紹介していきましょう。
ネタバレなしです!)

年老いた漁師のドキュメンタリーを観ているみたい!?小説『老人と海』

『老人と海』ヘミングウェイ 1952年
長編と呼べるほど長くはない作品。中編と表現されます。
ヘミングウェイはこの『老人と海』を出版後、翌年(1953年)ピューリッツァー賞、さらに翌年(1954年)ノーベル文学賞を受賞しています。

老化を感じていたら読んでほしい!

こんな人におすすめ
◯最近、老いを感じるようになってきた人
自然が好きな人
◯ついドキュメンタリー番組を観てしまう人
◯まだ自分で「名作」といえる作品に出会っていない人
◯自分はもっと「できる」のに周囲から評価されていないと感じる人
◯マグロ漁船のドキュメンタリーが好きな人
ストーリーは単純明快、年老いた(85歳!)漁師が大きな魚と格闘する話です。
そこには、栄光と挫折、歓喜と苦悩、愛情と孤独・・・いろんなテーマが散りばめられています。
この本のみどころは、3つ。
まず「自然」
たった一人で大海原にでた老人は、自然の脅威と戦いながらも、自然を仲間と位置づけます。
ところどころに出てくる生き物たちは、地球の仲間として老人を勇気づけてくれるところ。
一人で大海原に出た老人は孤独でしたが、自分も自然の一部として受け入れられる人柄が心象的でした。
もうひとつは、「老い」
若い頃は腕っぷしの強かった老人ですが、やっぱり自分の老いを感じずにはいられません。
知識と経験で迫りくる困難に立ち向かう姿に40代の私は勇気づけられます。
最後に「過去の栄光」
老人はむかし、腕利きの漁師として認められていましたが、最近は不漁続きで周りの漁師仲間からも憐れみの目で見られていました。
それでも老人はいいわけ一つせず、黙々と漁に出かけるのです。
一人で漁に出ている最中に老人が独り言で放った言葉、
「人間は負けるように作られてはいないんだ!」
この言葉が私の胸に突き刺さりました。
ネットでレビューを見てみると、『老人と海』の評価はいい評価と悪い評価のふたつに別れます。
たしかにストーリーが単純で、余計な装飾された表現もほとんど省かれた文章です。
老人の生い立ちや周囲の背景もほとんど描かれていないので、作者が何を言いたいのか分からないといった評価もありました。
でも、私はそこに魅力を感じるのです。
  1. 著者が説明しすぎない。
  2. すべてを書かず読者が解釈する余地を残す書き方。
  3. 論理よりも出来事を表現する

表現が主観的な形容詞が省かれているので、味気ないのでつまらないと感じてしまう人もいます。

実際に私も、3~4回読んだ記憶があるのですが、全部を読めなかったこともあります。
こうした「名作」と呼ばれる作品は、読む人、読む状況、読んでいるときの心境によって評価が別れることが多いです。

私のおすすめとしては、

自分が老化を感じたとき!

に読んでほしい作品です。

「年をとっても、経験と知識、工夫でなんとかなる!」って思わせてくれますよ。

会社に疲れたら爽快な無人島ストーリーを読んでおこう!⇒現代のサラリーマンたちが漂流したら?小説『オイアウエ漂流記』がおもしろい

年老いた漁師が漁に出た話

 

主人公が老人 ★★★★★
自然を感じられる ★★★★★
冒険要素 ★★★★★

 

この本のあらすじ

キューバのハバナの港町。
84日間不漁だった老人の漁師が海に出て、自然と孤独と戦う!

だけ!

非常にシンプルです。

全部で4日間の航海の中で老人は、眠ったときに「ライオンの夢」をみます。
アフリカに航海したときにみたライオンは、老人の「憧れ」「プライド」「強さの象徴」だったのかなぁと私は思いました。

実際にはそんな叙情的なことはかかれていません。時代背景や登場人物の背景も詳しく書かれていません。

物語をどう受け取るかは読者まかせの仕様になっているんです。

作者のヘミングウェイが持っていた船の船長や知り合った漁師の話をもとに書き上げた『老人と海』

ストーリーも文章もシンプルで、余計な説明もほとんどない作品。

登場人物もほとんど老人ひとりなので、会話もほとんどありません。
(実際には老人は独り言をつぶやきます)

出来事を叙事的に描写していくだけで、読んだ人に応じたストーリーになる!

まるで詩や俳句のような趣を感じますね。

読書をしている最中も、難しいロジックやミステリーではないのでスラスラと読み進められます。
本を読み慣れた人なら、4~5時間ぐらいもあれば読み終えられますよ。

ドキュメンタリーを観ているみたい!

無駄な描写が省かれていて小気味いい文章だということは前述しました。

この文章を読んで思い出したのは、某テレビ番組の青森県大間のマグロ漁師のドキュメンタリー

若い人たちは最先端の漁具で仲間たちと協力して、続々と釣果をあげる一方で、孤高の漁師は古い漁船、古い装備で特大マグロに挑む・・・っていうような話です。

まさにこの『老人と海』のシチュエーションじゃありませんか?
この本を読み進めていくと、なぜかこの大間のマグロ漁船の情景を思い浮かべてしまうのです。

それに、老人を敬慕する少年の存在が光ります。
だいたいドキュメンタリーでも家族や親密な人物も追いますよね。
(たぶん)偏屈な老人の日常の面倒をみながら、老人の腕を疑わない純真さと涙。

ドキュメンタリーは感情移入しないと楽しめないものです。
とくに『老人と海』では読者の解釈を促すような手法で書かれています。

だから「深い」ともいえるのですが、読んでみておもしろく感じなかったとしても大丈夫。
何年か、何十年か経って、自分がなんらかの老いを感じるようになってからぜひ再読してみてほしいと思います。

最後に

今まで読んできた本のなかで、老人が主人公という作品は少ないです。
自分も老いを感じる年になってきて、改めて読んでみると勇気をもらえました。

体力や健康は若い人には劣るけれども、今まで培ってきた経験や知識を活かして、最後は自分で運を手繰り寄せる!

どうしても名作と呼ばれる作品は、作者の意図を考えながら読んでしまいがちですが、この作品は素直にそのまま読んでいけばいいんです。

物語を解釈するのはあなた自身なのです。

海外の作品なので翻訳によっても微妙に読み心地が変わってきます。
私は福田恆存の翻訳で読みました。また違った人の翻訳でも読んでみたいと思います。

本当は原文で読んでみたいんですけどね。(ちょっと無理そう~)

実は1958年に映画もできていて、アマゾンプライムでも観られるます。
本を読まずに済ませたい人は映像でみるのもアリです!

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