こんにちは。山内健輔です。
私が以前に読んだ小説『悪の教典』は、ホラーな作品です。
ホラーとひと口にいっても、怪奇的なものからオカルト的なもの、パニック的なもの、いろいろあります。
この作品はそのホラーの中でも「サイコホラー」といわれるもの。
いろんなレビューを読んでみると「胸糞悪い」とか「後味悪い」などといった低評価のものがあります。
ですが、同じくらい、もしくはそれ以上に「展開がすごい」とか「おもしろかった」などの高評価の感想もある本です。
私の感想も結果的に「おもしろかった」です。
内容的には恐ろしいストーリーなのに、語り口は軽妙。
分厚い本なのに読みやすくて長さを感じない。
読むのがつらくなるのに次が読みたくなる。
私もあまり読んだことがないような類の小説でした。
今回は小説『悪の教典』を完全ネタバレなしで紹介していきます。
怖いけど読み続けてしまった小説『悪の教典』貴志祐介著
◯極限状況下での人間物語が好き
◯ホラー小説好き
◯人生一度は小説を書いてみたい
◯心理学に興味がある
記事執筆時点の情報です。記事ではできるだけ正確な情報を公開することを心がけていますが、金額、内容、出版社、その他の情報が変更されている場合があります。
確認してから購入することをおすすめします。
『悪の教典』紹介
2010年に刊行された貴志祐介の著作。出版社は文藝春秋。
上巻・下巻の2冊で紡ぎ出される学園もの。
極限の環境での人間の本質もあぶり出されるヒューマンストーリーでもある?!
多数の賞も受賞、映画化、マンガ化もされた作品
2010年山田風太郎賞
2011年このミステリーがすごい1位
他のいくつかの賞でも候補に上がるほどの人気作品です。
2012年には三池崇史監督のもとで映画化されており、主演は伊藤英明さん。
この映画も大ヒットされていて、小説を読んだ人がたくさん鑑賞したこともうかがえます。
現在では、オンデマンドやDVDで観ることができますよ。
烏山英司氏によってマンガ化(講談社)もされていて、おもしろいと評判の作品です。
あらすじと設定
町田市にある高校で学園内で最も人気を集める人気教師、蓮実聖司。
知能明晰、弁舌もさわやか、他教師、生徒、保護者からも信頼されていました。
学園内で問題が生じるたびに解決に労を惜しまない蓮実教諭。
集団カンニングやモンスターペアレント、さらには問題教師やいじめ問題まで。
問題解決されるたびに信頼を得ていく蓮実教諭ですが、実は裏の顔が・・・。
自宅ベランダに早朝現れる2羽のカラス、ムニンとフニンと名付けます。
睡眠不足になった蓮実はその2羽を排除するためにある仕掛けを・・・。
これ以上は本作をお読みくださいね~。
設定と特徴
- 学園もの(高校が舞台)
- 主人公が教師(英語)
- 主人公が天才(頭脳高い)
- 青春ものというよりホラー小説
- 多彩な人物設定
- 緻密な伏線とプロット(ストーリーの流れ)
サイコホラー小説のひとつ
ホラー小説にはいくつかのジャンルがあります。
なかでもこの作品は「サイコホラー」と呼ばれるジャンルです。
直接的に怖がらせるもの「霊的なもの」や「怪奇的なもの」ではなく、人間の「猟奇的なもの」や「異常な心理」などからくる恐怖の種類です。
サイコホラーとは
ホラージャンルの一種なのだが、「サイコ」と付く派生ジャンルとなっているのは、オカルトや超常現象やスラッシャー描写などで視覚的にもわかりやすく派手に怖がらせるホラーとは違い、人間の異常行動や常軌を逸した心理といった、見ていて(読んでいて)精神的にじわじわくるような、地味~に心に訴えかけてくるけど思わずゾッとするような「人間の狂気」を描いている点にある。
ピクシブ百科事典「サイコホラーとは」より引用
現実にいなさそうなものが出現するSF的・怪奇的ホラーじゃなくて、現実にも存在しそうなものや出来事が恐怖の対象ってこと。
「サイコホラー」は、まさにこの作品にピッタリの分類ですね。
怖いけどおもしろい
私は最近ほとんどの本は電子書籍で読んでいます。
この本を選んだのも、なにかの本を購入したときに「おすすめ」で提案されたから。
貴志祐介作品は初めてだったので、どんな本か分からずに購入しました。
読んでみてビックリ。めちゃくちゃ読みやすいんです。
私の読んでみた印象としては、
序盤…おもしろい!
楽しかった高校時代を思い出しながら、学校で起きる問題に取り組む蓮実教諭を読む。
中盤…あれ?
なんだか物語の様子が変わってきたぞ~。
でも、登場人物たちに感情移入してくる。
終盤…ヤバい展開
もう読みたくない!と思いながらもついつい次のページをめくってしまう展開。
「おもしろかった~!」と評価すると人間性が疑われそうな作品ですが、実際私が感じた評価はおもしろかったです。
(この作品はあくまでフィクションですから、評価は自由なはず!)
極限の恐怖の環境のもとでみられる人物の本性。
生き残るために協力したり、逃げたり、戦ったり・・・。
それまでの平常のときの人間性とは別の人格が現れることで、人間関係が変化する様子がうまく表現されている点が印象に残りました。
長編だけど一気に読める本
『悪の教典』はかなり長めの小説です。
私も一日40~50分(通勤電車に乗っている時間)読んで4~5日かかりました。
でも、ストーリー展開が早いのと文章が現代語的で読みやすいため、一気に読んでしまった印象です。
もっと電車のなかの時間がほしいと思ったぐらい夢中になって読みました。
実際には、途中読むのがつらくなってくる展開があるのですが、ぜひ最後まで読んで結末を見届けてほしいですね。
ただし、注意点もあります。
◯サイコホラーが苦手
◯ハードボイルドが苦手
◯人の痛みに超敏感な人
※ハードボイルド
暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。Wikipedia「ハードボイルド」より引用
最後に
『悪の教典』はこの記事のタイトルにある通り、「怖いけど読んじゃう」小説。
それは、プロット(物語の展開のしかた)が「華麗」で、ホラー小説だけど感情のみに頼らない合理的な構成になっていることによるもの。
伏線の使い方も「なるほど!」と唸らさせられました。
物語の終わり方も気になります。
続編はあるのでしょうか?
もし刊行されたら、読みたくないけど、たぶん読んじゃうんだろうな~。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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