こんにちは。山内健輔です。
新選組の中でトップクラスの人気を誇るのが「土方歳三」。
数ある新選組小説の中でも主人公として取り上げられる頻度は最も多いといえるかもしれませんね。
私が好きな作家の富樫倫太郎さんは、現代小説も書きながら歴史小説も多く出版していて、どれもおもしろいんです!
今回はそんな作家が描いた土方歳三の物語、
を紹介していきます。
富樫倫太郎の小説『土方歳三』は丁寧に生涯を描いた作品。
記事執筆時点の情報です。記事ではできるだけ正確な情報を公開することを心がけていますが、金額、内容、出版社、その他の情報が変更されている場合があります。
確認してから購入することをおすすめします。
おすすめの人
◯土方歳三のファン
◯幕末小説が読みたい!
◯かっこいいヒーロー小説を読みたい!
◯冨樫倫太郎の小説が好き
┃
鬼の副長
┃
常勝将軍
司馬遼太郎『燃えよ剣』で使われている土方歳三の少年時代のあだ名。
茨のトゲが語源で乱暴者やイタズラ小僧のような意味で使われた。
この本では、その3つの時期にバランスよく焦点を当てて物語が進行。
この小説では作者が意識したのかどうかは分かりませんが、『燃えよ剣』をもっと読みやすくした感じ。
だれもが知っている土方像でありながら、作者独自のエピソードを加えられた主人公には、男性も女性も惹かれることでしょう。
『土方歳三』はどんな本?
読みやすい | ★★★★★ |
女性にもおすすめ | ★★★★★ |
主人公が万能 | ★★★★★ |
文体も現代文で書かれており、会話が多いので読みやすいです。
どうしても幕末の歴史小説では登場人物が多くなってしまいがちで、詳しくない人は混乱しやすいのですが、この本では登場人物も絞られていて、全員が特徴的な性格なので人間関係も理解しやすいです。
凄惨な場面や事件が多く暗い印象になりがちな幕末モノですが、全体的に明るくさわやかな印象で、幕末小説としては新鮮に感じます。
時代背景の説明も簡潔で展開が分かりやすいので、主人公の物語に集中して読みやすいのも特徴です。
恋愛や友情もスパイスとしていい味をだしていて、戦闘シーンも淡白に描写されるので女性も違和感なく楽しめる作品ですよ。
読み進めていると作者の土方歳三への愛情が感じられます。
みどころは?
作品のみどころは、やっぱり土方歳三の生き様。
クールで鬼の副長といわれながらも、完全に冷徹になりきれない姿が印象的でした。
試衛館時代からつるんでいた伊庭八郎や沖田総司との絆や近藤勇との関係、不器用な恋愛など、決してドライ過ぎない優しさや愛情を感じられる「漢」として描かれています。
他の小説ではなかなか見られない土方歳三像です。
他にも、
- 沖田とのやりとり
- 伊庭八郎、人見勝太郎との信頼関係
- 他の登場人物も個性的
- 敵役の憎らしさ
- 箱館戦争の戦況
本のタイトルが「土方歳三」だけあって、ほとんど全部が土方歳三の視点です。
新選組時代が主流の小説が多い中で、上京前と鳥羽伏見の戦い以降も詳しく描いているので、新鮮さを感じます。
あまり土方歳三を知らなかった人や、いきなり司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読むのをためらっている人にとっては、読みやすくて時代の流れも分かりやすいのでおすすめです。
土方の生涯が丁寧に書かれた小説
新選組関連の小説は、作家によってキャラがぜんぜん違うことが多いのが特徴です。
でも、土方歳三だけはほとんどの作家さんはクールで冷徹に描いています。
富樫倫太郎の『土方歳三』もみんなが知っているクールな歳三ではあるのですが、ひと味違った優しさと侠気(おとこぎ)のある性格を読むことができるんです。
また、他の新選組小説ではあまり詳しく書かれない箱館戦争の様子も結構なボリュームで書かれているので、興味深く読み進められました。
上京前の江戸ー多摩にいるときや京都での新選組時代の歳三も魅力的なのですが、この蝦夷に移ってからの土方歳三はまた一段とかっこいいんです。
箱館での幕府軍では、近藤勇が榎本に、沖田総司が人見勝太郎や伊庭八郎に変わって信頼関係を築いていく姿があります。
富樫倫太郎さんの小説の世界では、登場人物たちのキャラ設定がとくにうまく、魅力的な人物と憎らしい人物とにはっきりしているので、読者も迷わずに感情移入しやすかった印象です。
この本では、新選組結成前と箱館時代がとくに丁寧に書かれているように感じます。
新選組ファンには少し物足りないという声も聞かれますが、土方ファンにはたまらない小説でした。
最後に。
富樫倫太郎はこの作品の前に「箱館三部作」といわれる作品も書いています。
土方歳三の外伝的な作品で、全部に土方歳三や周囲の人物たちが登場。
私は全部読んでいますが、どれもおもしろい!
作者が箱館出身だけあって、臨場感があります。
出版されたのはこの箱館三部作が先ですが、『土方歳三』を読んでから『箱館三部作』を読むと全部が連動していておもしろく読めますよ。
ぜひ一緒に読んでみてくださいね。
関連記事
⇒ガルトネル事件を題材にした小説『箱館売ります』富樫倫太郎著
⇒富樫倫太郎の小説『松前の花』土方歳三の存在感が光る蝦夷血風録。
⇒富樫倫太郎『神威の矢‐土方歳三蝦夷討伐奇譚』意外と楽しめる小説
⇒北条早雲を知りたい人におすすめ!富樫倫太郎『北条早雲シリーズ』
⇒『燃えよ剣』(小説)は司馬遼太郎の最高傑作。ラストに注目!
⇒北方謙三『黒龍の柩』幕末上級者も唸るストーリ展開がみどころ!
⇒司馬遼太郎『新選組血風録』冷徹集団といわれた男たちの人間ドラマ
⇒鬼の副長の内面がよく分かる小説。広瀬仁紀著『土方歳三散華』
⇒池田屋事件の裏にあった人間ドラマを描いた本『池田屋乱刃』
⇒徳川慶喜を描く小説。司馬遼太郎『最後の将軍』はどんな小説?
⇒柴田哲孝著『幕末紀 宇和島銃士伝』新しい幕末小説を探している人へ
⇒『SROシリーズ』富樫倫太郎の大人気警察小説。10冊と読む順番
⇒小説『生活安全課0係シリーズ』コミカルなかけ合いでライトに楽しむ!
⇒富樫倫太郎『警視庁ゼロ係小早川冬彦シリーズ』KY刑事が今回も大活躍