ムシに詳しくないひとも楽しめる本『昆虫はすごい』(光文社新書)

こんにちは。山内健輔です。

昆虫は好きですか?

なかには「嫌い」っていう人もいるかもしれませんね。

そんな人でもちょっとだけ楽しめる本があるんです。

昆虫学者の丸山宗利さんが書いた本『昆虫はすごい』
身近にみられる昆虫たちの「すごい」生態を数多く紹介している本です。

昆虫が好きな人も虫嫌いなひとも、詳しい人も詳しくないひとも小さな生き物たちの世界に驚愕します。

昆虫は生物の中でもとくに多様性に富んでいて、その能力や行動はかなりぶっ飛んだものが多数。

100℃のガスを噴射する虫、アリをだますシジミチョウの幼虫・・・読んでいるとワクワクする本でした。

『昆虫はすごい』丸山宗利 著(光文社新書)
2014年8月

ムシに詳しくないひとも楽しめる本『昆虫はすごい』(光文社新書)

※ご注意
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虫が詳しくないひとにもおすすめできる本

こんな人におすすめ
昆虫が好き
◯ムシの生態が知りたい
◯ムシ好きな子どもがいる
虫が嫌いな人
◯都会に住む人
◯周りに昆虫が多く生息する環境がある人
昆虫のおもしろい生態を次々と紹介していく本です。
昆虫好きな人はもちろん、昆虫について学びたい人虫好きな子どもがいる人にもおすすめ。
しかも、実は「虫が嫌い」っていう人にも読んでほしい本なんです。
読みものとしてもおもしろいだけじゃなく、「すごい」生き方を知ることで少しでも昆虫が健気に生きていることを知ることができるんです。
難しい言葉はあまり使わずに、ムシに詳しくない人でもわかりやすく説明しています。
とくにインパクトの大きい生態のムシたちを紹介しているので、昆虫の本を読むのが初めてでも大丈夫
昆虫マニアの人には、知った話が多いかもしれませんが、情報量が多いのでおもしろく読めるはずです。
ヒトの生活に合わせるように章をまとめているので、楽しく読むことができますよ。

専門用語は使わず理解しやすい説明

この本の特徴は、

  • 昆虫たちのおもしろい行動や能力を紹介
  • 写真(ほぼモノクロ)つきで興味がそそられる
  • 小さな生き物たちの世界
  • 昆虫マニアだけでなく昆虫の本が初めての人向け
  • 専門用語は使わず、理解しやすい工夫
  • 人の行動とリンクさせているのでおもしろい
  • 昆虫の情報は多め
  • 章立てを工夫していて紹介の仕方がうまい
  • 一つの項目が短いのでちょっとずつ読み進められる

ひとくちに「昆虫」といっても、その形態、行動、繁殖行動などはその昆虫の数だけあります。
そのなかでも、世間の人々が驚くような生態をもった昆虫たちを紹介している本です。

昆虫を紹介したあとには、そのムシの写真が載っています。
モノクロ(白黒写真)なので「分かりづらい」との声も聞かれますが、この本は「詳しく見たい」虫マニア向けではなく、昆虫のことにあまり詳しくない一般の人向けです。

美しい昆虫もいてカラーで見たい気持ちもあるのですが、中には「虫が苦手」な人もいます。
「新書」なので、価格を抑える必要もあったのかもしれませんが、モノクロでちょうどよかったのかもしれませんね。

文章は学術的に難しいわけではなく、一般の人が理解しやすい単語で書かれているので読んでいてストレスはありません

多くの昆虫の不思議な能力・行動について書かれていて情報量はかなり多いのですが、ひとつの項目が短めにまとめられているのでちょっとずつ読み進められるし、途中からでも読みやすくなっているのも特徴のひとつです。

昆虫たちの「すごい」生態がみどころ

↑私が公園で見つけた昆虫。なにかに寄生されていたのか目立つ場所で息絶えていた。

擬態(ぎたい)・共生・狩り・農業・着飾る・・・人間がやることは、もっと以前から昆虫がやっていた!

昆虫どうし、昆虫と植物など生物たちが互いに巧妙に関わり合う姿がこの本のみどころ。
ムシたちの多様性には驚かされます。

特殊な昆虫や植物は、ある一種だけの昆虫の行動や生態に依存して繁殖行動をしているものもいます。
要は、その依存されている種が絶滅してしまうと依存している側も繁殖することができなくなってしまうのです。

現代では生物の多様性が叫ばれていますが、自然環境を守る意義についても考えさせられました。

生態のおもしろい昆虫たちを紹介しているので、昆虫マニアの人は知っている話もあるかもしれませんが、あまり詳しくない人がこの本を読むことで、小さな昆虫たちの世界にも眼を向けるきっかけになるのではないでしょうか。

昆虫観察にでかけたくなる!

交尾中のゾウムシ

昆虫たちの行動は、その個体が「生きる」というよりも「自分の遺伝子を残すことを前提に考えることで説明できるといいます。

かといって、私たちから見たら全部が合理的といえるわけでもなく、なんとも回りくどい方法で繁殖を行う昆虫もいます。
もしかしたら私たちには理解できていないだけかもしれませんが・・・。

でも、そういうところがおもしろいんです。
昆虫たちの行動がどんな理由で行われているのか、どんな利点があるのか、そんなことを考えながら読んでいるとワクワクしてきます。

昆虫たちは、私たち哺乳類と違って世代交代のサイクルが速いので、進化も速いのが多様化した原因だといわれています。

ってことは、私たちヒトよりも早く地球に現れて、早いサイクルで進化しているってこと。

もしかしたら、ヒトが地球でいちばん進化したと考えているのは間違えで、昆虫たちのほうが高度に進化しているともいえるのかもしれませんね。

それはともかく、昆虫学者たちはどうやってムシの行動を観察しているのか知りたくなります。

私も昆虫が好きでたまに公園や雑木林で昆虫を探しに行くことはありますが、今までは見つけただけで満足していました。
ですが、この本を読んだあとは、ムシたちが何をしているのか?ってことまで観察してみたくなりました。

今、この記事を書いているのは真冬でムシも少ない時期です。
早くフィールドで昆虫観察にいきたい気持ちになる本でした。

最後に。

繭を作っているのか、虫が葉の上で糸を吐き出している

著者の丸山宗利さんの昆虫への愛情が伝わる本です。

昆虫好きな人が、熱意をもって昆虫をプレゼンテーションをすると、興味のない人でもすごくおもしろいと感じます。

世の中には「虫嫌い」な人は多いですが、『昆虫はすごい』を読むことで、無意味に駆除されることを減らせるかもしれませんね。

この本を読むことで、今まで漠然としか分かっていなかった「生物多様性」を守る意味が少し具体的に分かったような気がします。

子供のころに読んだ『ファーブル昆虫記』を思い出させる本です。
まだ読んでいない人はぜひ読んでみてくださいね。

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