こんにちは。山内健輔です。
ムシの顔って大きくしてみると、愛嬌があったり、かっこよかったりして、ついつい見惚れてしまうんです。
虫の顔を拡大した写真に憧れて、「こんな写真が撮ってみたいなぁ」なんて思い、虫を探すも……。
いない!
虫なんてどこにでもいるさ~と安易に考えて、虫撮りにでかけてみるも思ったところにいないんです。
ちょっとした公園なんかに行けばすぐに出会えると思っていた虫たちも、ちゃんとした生態を知っていないと見つけられないのです。
そんなときに出会ったのが、昆虫学者のコマツ先生が書いた本『虫のすみか』。
住んでいる環境ごとに虫と生態をセットに紹介してあり、さらにちょっとした雑学もユーモアを混じえておもしろおかしく解説している本です。
虫嫌いな人にはちょっと難しいかもしれませんが、嫌いまでいかない一般の人、もちろん虫好きの人にもおすすめできます。
観察のポイントや見つけるコツなんかも載っていて、知っておくと昆虫撮影や昆虫観察なんかに大いに役立ちそうな本ですよ。
小松貴 著 (ベレ出版)2016年6月
昆虫のすみかを観察することで生態を知る!小松貴『虫のすみか』
記事執筆時点の情報です。記事ではできるだけ正確な情報を公開することを心がけていますが、金額、内容、出版社、その他の情報が変更されている場合があります。
確認してから購入することをおすすめします。
昆虫をもっと知りたい人におすすめ
◯虫好き
◯昆虫写真を撮りたい
◯生態系について学びたい
◯虫の探し方を知りたい人
さすがに、本当に虫が苦手で嫌いな方は読むのがツライかもしれません。(写真も多く掲載されています)
虫のことを知りたければ、その巣を知るのが一番!
生き物にとって家の確保は死活問題です。天敵や自然災害から身を守るため、生き物たちは身の回りのあらゆるものを使って家をつくります。一見、その日暮らしをしているような虫たちだって例外ではありません。
我々の身近には、さまざまな巣を構えて生活する虫たちがたくさんいます。そのなかには、ハチやアリに負けず劣らぬ、おもしろい巣をつくるものも少なくありません。巣をとおして虫の生きざまがわかる一冊!
写真と文章でおもしろく読める!
『虫のすみか』の特徴は、
- 棲む環境ごとに紹介
- あまり知られていない昆虫多め
- 昆虫・ムシに対する愛情が伝わる
- 探し方・観察のポイントも解説
- 雑学&エピソードもおもしろい
- カラー写真付きでイメージしやすい
- 情報量多め
- ユーモアありの文章
他のコマツ博士のエッセイを読んだことがある人は「今回は抑え気味だな」と感じるかも知れませんが、ユーモアと皮肉に富んだ文章は健在です。
説明一辺倒にはならずに、マニアックな虫たちを紹介してくれています。
昆虫に対する情熱が大きいため、かなり詳細な説明があり、読み手を昆虫の世界に引き込んでくれます。
コマツ博士は写真家でもあるため、載っているカラー写真はきれいで、文章をイメージするのに役立ちます。
昆虫の多様性に好奇心を煽られる!
ムシの住んでいる場所は、その生態と密接にリンクしています。
たとえば、南米に棲むハキリアリは外から葉っぱを巣に運んできて、そこに生えたキノコを食料にしています。
まさに農業です。
日本にはハキリアリはいませんが、非常によく似た生態をもったシロアリがいて、同じように農業をしています。
シロアリは「アリ」ではありませんが、似たような習性をもっているんですね。
ほかにもハンミョウの幼虫。
これも成虫に似て非常に獰猛な食性で、自分の眼の前を通り過ぎる虫をパクッ!
表紙の写真はこの幼虫です。
生態に合わせて住む環境を上手に選んでいる様子、すみかの中でどんな生活をしているのかを楽しく紹介しています。
文章がおもしろく、ムシに対する情熱が伝わってくるので、ムシに詳しくない人も話に引き込まれてしまいます。
むしろ、詳しくない人のほうが生態系やムシの暮らす環境減少への危惧へ興味をもつことができるといえるでしょう。
いずれにせよ、生態の多様性を知ることで日々の暮らしの中で虫を見つけたり、無意味に駆除することを減らせるかもしれません。
この本は、昆虫観察のおもしろさを通じて、地球環境へ思いを馳せるきっかけにもなるはずです。
昆虫好きにはたまらないおもしろさ
図鑑や本で昆虫の名前や食べるものを知っていても、実際にフィールドで見つけることは難しいんです。
いわゆる「普通種」(一般的によくみられる昆虫)でも、いる場所には大量にいるけれども、いない場所では全く見つからないことも。
この『虫のすみか』を読むと、紹介されている昆虫の探すポイントがよく学べます。
実は身近にいるのに、今まで存在すら知らなかった昆虫も多いかも知れません。
普通に生活していると虫を見る機会がほとんどないのに、ちょっと意識を変えて虫を探し始めると意外と身近に多くの種類の虫が暮らしていることに気づきます。
その身近にいる昆虫は、もしかしたら希少な絶滅危惧種の動物の貴重な食料源になっているかも。
なんて地球の生態系、食物網を想像しながら読み進めていきたい本です。
最後に。
昆虫の変わった生態を紹介していく本は数多くあります。
ですが、昆虫のすみかを切り口にした本を読んだのは初めてでした。
確かに、虫を探しに行くときには、目につく虫ばかりみていました。
だから、昆虫の写真を撮りにいっても見つけられないことが何度もありました。
そして、見つけられたとしても、逃げられる、うまく撮れない、ってことも何度も。
もう一度虫の習性を学んで、いつかうまい昆虫写真が撮れるようになりたいと目論んでいます。
虫好きの人も、そうでない人もぜひ一度読んでみてほしい本でした。
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⇒虫好きの子の親が読んでおきたい『虫捕る子だけが生き残る』
⇒ムシに詳しくないひとも楽しめる本『昆虫はすごい』(光文社新書)
⇒生き物博士・千石先生の言葉『つながりあういのち』を読んでほしい!