こんにちは。山内健輔です。
- 未来に向けて自分は何をしたらいいか迷っているとき。
- 漠然と何かをしなくちゃと思って時を過ごしているとき。
- 自信を失ってしまったとき。
そんなときに読みたい小説『幸せの条件』誉田哲也著。
一人の女性の自己成長を通して、明日の自分に勇気を与えられる本です。
現代が直面する農業とエネルギーの問題にも焦点を当てながら、「幸せとはなにか」を考えさせられます。
作者の誉田哲也さんが紡ぎ出す文章は、スラスラ読めて、ほとんど読み直しする箇所がありません。
暗い感じの作品と明るい青春を感じさせる作品とが対照的で、今回の『幸せの条件』は明るい方。
読後感もスッキリして、読み応えもバッチリ。
読んだ人には、温かさと勇気を与えてくれるストーリーです。
今回の記事もネタバレなしで紹介していきます。
2015年8月(中公文庫)
今の自分に勇気を与えられる小説『幸せの条件』誉田哲也著
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確認してから購入することをおすすめします。
自分に迷ったときにおすすめ!
◯何をしていいか迷っている
◯漠然と幸せになりたいと思っている
◯自信を失ったとき
◯農業に興味がある
◯エネルギー問題を解決したい
◯人生にいまいち勇気が出ない人
この本のテーマは、「農業」と「エネルギー」と「幸せ」。
現代の日本が直面する農業とエネルギーの問題を24歳の女性の視点で描いています。
食料自給率や減反政策、高齢化や第1次産業の担い手不足。
化石燃料に頼ってきたエネルギー問題。
震災で浮き彫りになった原子力発電への依存と私たちの自覚。
24歳の都会で育った女性が、長野で農業に従事することでみえてきた様々な問題をストーリー仕立てで学ぶこともできる小説です。
問題点を浮き彫りにするだけでなく、将来への可能性も示唆してくれているような気がします。
この本のテーマはそれだけじゃなくて、むしろ本題はひとりの女性が自己成長していくストーリーのほう。
「誰かに必要とされたい」と思いながらも、何もできない自分。
そんな自分が幸せになるってどうすればいいんだろう?
って、思う人に向けての物語。
農業やエネルギーに興味があるとか、ないとかではなく、本当は多くの人が読んでほしい作品です。
中公文庫『幸せの条件』特設サイト
スラスラ読めてズキッと刺さる小説
『幸せの条件』の特徴です。
- スラスラ読める
- 温かい・優しい雰囲気
- エネルギー自給の問題
- 現代農業の課題
- 社会問題の勉強にもなる
- 心理描写・状況描写がうまく感情移入できる
- グっとくる場面がいくつか。
誉田哲也さんの作品は、流れるように状況や心理を描写していて、内容が理解しやすいのが特徴。
説明や場面転換が巧妙で、主人公と一緒に体験しているような感覚になります。
さらに、私たちが知らなかった農業の話や「バイオエタノール」といった専門的な話も、噛み砕いてわかりやすく、主人公と一緒に学んでいける構成になっているのです。
おもに植物資源を発酵、糖化させてエタノールを生成して代替エネルギーになる。
ガソリンに代わる燃料として注目されている。
全体的に明るい、やさしい雰囲気の小説なので読後感もさわやか。
気持ちよく読めます。
むしろ、読んだあとは日々の食事に感謝するような気分になりました。
もうひとつ、読んでいて、「グッとくる」というか「グサッと刺さる」というか、胸に残るシーンがいくつかあります。
私は2回読んでいるのですが、どちらも同じ場面でジワッと目の奥が熱くなってしまいました。
悩める女性の自己成長の話
農業の抱える問題やエネルギー自給についての話もみどころのひとつではありますが、この作品のテーマは「自己成長」。
社会の問題を一般市民に当てはめながら問題提起を行いながらも、ひとりの女性が自己成長していく姿を描くハートフルなストーリーになっています。
都会で生活している間には気付けなかったことを、田舎で農業に従事するうちにだんだんと気づいていく展開。
最初は弱音ばかり吐いていた主人公が、周囲の温かさに触れることで何かに気づいていく様子が描かれています。
中盤から終盤にかけては、確実に自分のなかで変化したことに気づく主人公。
いつの間にか弱音や愚痴はなくなり、周りの人のことを気遣う姿勢になっていくのです。
そして、今の自分に何が必要かを自分自身で見つけていく……。
そんな主人公を見ていて、勇気と感動を覚えずにいられませんでした。
明日の自分に勇気を与えられる本
最初は誰かに必要とされたいと願っていた主人公。
でも、大切なのは「自分に必要なのは何か」ってことに気づけた中盤。
このあたりから、自分の胸に突き刺さるようなセリフが登場します。
誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分の幸せは自分で切り開く!
都会ではどちらかというと「マシなほう」を選択すればよかっただけだが、人と濃密に接する機会を得ることで主人公は気づきます。
「誰かのためにできること」
誰かに必要とされることが「幸せ」なんじゃない、誰かのためにやれることに気づけること。
ナンバーワンでなくてもいいし、オンリーワンでもなくていい。
自分ではなく、大切な誰かのために、ってことが幸せなのかもしれない。
そんなことに気づけた作品です。
この本を読むまでは、「誰かより先に」とか「誰もやっていないことを」とか「誰よりもうまく」とかばかりを考えていました。
ですが、この本を読んで気づけたのです。
「誰かのために」ってこと。
読み終わったあとは、ずいぶんと心がラクになった気がします。
そして、明日の自分に勇気と希望を与えてくれました。
この本を読んで、心からよかったと感じています。
最後に。
人との関わりが強くなると、意図せずとも相手を傷つけてしまったり、逆に傷つけられたりってこともあります。
それが怖いので人となるべく強く関わらないようにしがちな私。
本音を語りたくない私。
そんな私の心に刺さる言葉がありました。
内容は伏せますが、本当に心が温まるセリフで、胸が熱くなったのを実感しました。
誉田哲也さんの作品はいろんなジャンルの作品があります。
警察ものや猟奇的なもの、青春もの。
どの作品も人の優しさに触れるものが多いです。
スラスラ読めて、ときどきクスッ。たまにホロリがあったり。
一度、読んでみてほしい作品です。
この記事を最後まで読んでくれたあなたにはきっとピッタリなはず!
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