二人の人物の存在で人生が傑作に?!瀬尾まいこ『傑作はまだ』

こんにちは。山内健輔です。

なんとなく、日常に疲れて、人間関係も嫌になり、外出するのも億劫になる。

生きていれば、そんなときもありますよね。

そういう人におすすめなのが読書。

気軽に読めて、心が温まる小説。

読んでいる時間は、物語に入り込んで現実逃避できるし、読後感がよければ元気もでてきます。
体力もお金も使わない、最高の気分転換になるのです。

そんなあなたにおすすめな小説、『傑作はまだ』
作者の瀬尾まいこさんの小説は、読むと心がやすらぎ、人に優しくなれると評判です。

感情の起伏も激しすぎず、ユーモアを交えながらおもしろおかしく、喜びと幸せを実感できる作品です。

小説としては短めで、本を読み慣れた人なら2~3時間で読み終わります。

今回の記事でもネタバレなしで紹介していきましょう。

『傑作はまだ』瀬尾まいこ 著
2019年3月(文春文庫)

二人の人物の存在で人生が傑作に?!瀬尾まいこ『傑作はまだ』

※ご注意
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確認してから購入することをおすすめします。

手軽に読めて心がホットに。

こんな人におすすめ!
◯軽く読みやすい小説を探している
◯心が温まる小説を読みたい
◯人とのつながりに躊躇がある人

50代の男性。人気の作家が主人公。
人づきあいが苦手で、その必要もないと思っている人物が、ひょんなことから他者との関係を見つめ直す物語。

「設定に無理がある」「都合が良すぎる」といった声も聞かれるストーリーではありますが、私は素晴らしい小説だと思いました。

そもそも小説は、フィクションであり、あり得ないことが起こったり、非日常的な出来事があったりすることで人を感動させるものだと思っています。

確かにこの小説の設定や展開はリアリティを追求しすぎる人には無理があるかもしれません。
主人公目線で見れば、感動的なストーリーになる反面、他者から見ると疑問が生じる行動も多いのも事実です。

……ですが、私も人づきあいが苦手な面も少々あります。
なので、この小説の主人公と似ている部分があったのです。

読んでみた体感としては、

人それぞれの幸せのカタチ

を許容できるようになった気がしました。

ユーモア&軽い文章で読みやすい!

この本の特徴としては、

  • 手軽に読める
  • 2~3時間で読了できる
  • ハートフルストーリー
  • 何気ない描写も奥が深い
  • ユーモアがありながら楽しく、明るい雰囲気
  • クライマックスに感動

文章は軽くて、ところどころにウィットに富んだ(気の利いた)言い回しが心地よく、読みやすい小説です。

そんな中でも、登場人物たちの心情や人柄を何気ない会話や行動の描写で表現する奥の深い文章は、読み手を心地よく物語に感情移入させてくれます。

話のテンポもいいので、2~3時間で読み終わるほどの小説ながら、内容は充実しているように感じられる作品です。

孤独を選んだ男が変わる瞬間がみどころ

「永原智です。はじめまして」そこそこ売れている50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた。孤独に慣れ切った世間知らずな加賀野と、人付き合いも要領もよい智。血の繋がりしか接点のない二人の同居生活が始まる――。明日への希望に満ちたハートフルストーリー。

文春文庫『傑作はまだ』紹介ページより引用

ほぼ1人だけで生きてきた50歳の主人公が家族の存在によって、他者と関わることで得られる喜びを知っていくストーリー。

みどころは、何気ない会話や出来事で小さな幸せを積み重ねていくシーン。物語の雰囲気が優しくて、どんどんストーリーの中に自分を投影してしまう気がしていきました。

他者と関わることは、自分や他人を傷つけてしまうリスクを負うものです。
人を傷つけたり、自分が傷つくダメージを考えたら、1人で生きている方がいい。
他人に使うエネルギーと見返りを考えたら1人のほうがいい。

そんな主人公の気持ちもよく分かります。
自分ひとりで生きていくつもりだったはずなのに、突然現れたひとりの若者によって「幸せ」を感じてしまう戸惑いがうまく表現されているんです。

テーマは、

一人の自由、他者から与えられる幸せ

とくに印象に残ったのは、食べ物を通じて人とのつながりを深めていくシーンの数々です。
優しい世界観のなかで、ちょっとした幸せから始まり、「えっ?」っていうラストまで、一気読みしてしまう小説でした。

ラストでビックリ。予想できず!

ミステリーやサスペンスでもない、ハートフルストーリーなのに先が気になって、ついページをめくってしまいます。

確かに設定や展開はそんなに身近にありふれてはいないものですが、主人公の心境は当てはまる人も多いのではないでしょうか。

とくに圧巻なのは、クライマックスからラストの展開

何か書くとネタバレになりそなので、書かないようにしておきますが、不覚にも胸が熱くなりました。
とてつもなく大きな愛を感じます。

こんな展開はめったにあるものではないのですが、もしかしたらまだ気づけていない人のやさしさが自分にもあるのでは?と考え込んでしまったぐらいです。

心地よく読める小説で、読後感はさっぱりした感じかな、と思ったら「感動」でした。
この小説こそが「傑作」なんじゃないかと思うほどでした。

そして、二人の人物の存在が主人公の人生を傑作にするのではないかと先を妄想してしまう読後感です。

最後に。

重そうなテーマですが、軽くて明るい感じの世界観です。
すぐに読み終わるので、できればもう一度読んでみてほしいのです。

再読すると、ラストを知っているので感動は少ないのですが、作者の筆致のうまさがよく分かります。

作者の瀬尾まいこさんの作品はとくに女性に人気ですが、男性にも薦められます。
この本に出会ったのは、たまたま「おすすめ」に出てきたのがきっかけですが、読んでよかったと思わせるものでした。

初めて読む作家さんの本でしたが、他の作品も読んでみたくなりました。
『傑作はまだ』、おすすめです!

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