小説『密林』鳥飼否宇。伝説のクワガタ探しがとんでもない事件に!

こんにちは。山内健輔です。

生き物の宝庫といわれる密林。
自然が好きな人にとっては、なんとなくワクワクする響きがありますね。

読みたい本を探しているときにみつけたのが、鳥飼否宇さんの小説『密林』
冒険小説を読みたいなぁ~と思って探しているときに出会いました。

私は、クワガタが好きで実際に飼育もしたり、採集にいったりもしています。
『密林』のレビューを読むと、「オキナワマルバネクワガタ」の文字。

なかなか小説で「オキナワマルバネクワガタ」が出てくるものってないですよ。
結局それが興味を惹くキーワードとなって、購入する運びとなりました。

読んでみると、ストーリー自体もおもしろいのですが、それよりも沖縄の自然についての記述が印象に残る作品でした。

『密林』鳥飼否宇 著
2003年10月(角川文庫)

小説『密林』鳥飼否宇。伝説のクワガタ探しがとんでもない事件に!

※ご注意
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確認してから購入することをおすすめします。

昆虫採集好きにおすすめ

こんな人におすすめ
◯昆虫が好きな人
◯生き物好き
◯沖縄、やんばるの森に興味がある人
初めて読む作家さんの本でした。
クワガタ採集に行った昆虫好きが事件に巻き込まれる話に興味をもって、読み始めたので詳しくは知りませんでしたが、どうやらシリーズものだということに後から気づきました。
作者の鳥飼否宇さんは、生き物の本を書くほどの詳しい方らしく、今回の舞台になる沖縄県やんばるの森についての記述は、素人の私にも分かりやすく書かれています。
まだ、行ったことがないものの、訪れてみたくなりました。
「宝の地図」や「暗号」、「謎解き」もでてくるミステリーあり、追跡者に迫られるサスペンス要素あり、密林で迫りくる自然の脅威からのサバイバル要素あり、心霊現象のようなホラーパニック要素あり。
文体や文章構成は読む人の好き嫌いが分かれそうな気もしますね。
ハチャメチャな展開ではありますが、楽しんで読むことができました。

軽妙な文章で一気読み。

原生林に眠る財宝とは。大自然に展開する冒険小説
沖縄・やんばるの森は、人の手の入っていない自然がいまだ残る原生林だった。昆虫採集家・松崎と柳澤は、ギネス級に成長するオキナワマルバネクワガタの幼虫を求め、森へと踏み入る。台風の襲来により荒れ狂う森で、二人は軍から脱走した米兵と出会い、森に財宝が隠されている事を知る。傷ついた米兵から、難解な暗号で書かれた財宝の地図を残された二人は……!?米軍、ハンターと二人の三つ巴での、命を懸けたサバイバル宝探しゲームが始まる!!奄美大島で生物観察を続ける鳥飼否宇が描く、迫真の大自然アドベンチャー。

角川文庫『密林』鳥飼否宇 紹介ページより引用

小説『密林』の特徴は、

  • サバイバル・ミステリー・サスペンス・ホラーが混ざる。
  • 軽妙な文章で読みやすい
  • やんばるの森についての見識が深い

物語はミステリー作品ですが、私は冒険小説として読みました。
紹介文にもある通り、自然に対して博識な著者の作品なので、勉強になります。

私は電子書籍のダウンロード版を購入しました。
文字化け(?)のような漢字が表示できず、読めない箇所がいくつかみられます。
(文脈で見当はつくので、普通に読めますが)

生き物や自然についての観察眼

ストーリーや仕掛け自体は、「それなりにおもしろい」というのが印象です。

とりあえず、ハチャメチャな展開になるので詳しく書くとネタバレになってしまいそう。
ミステリーっていうよりも、冒険・サバイバル作品として読んだほうが楽しめるような気がします。

それよりも私が得たのは、「やんばるの森」への興味。
沖縄や奄美諸島周辺にみられる、「マルバネクワガタ」。

クワガタ好きには憧れの種です。

今回、私を惹きつけたのは「オキナワマルバネクワガタ」の文字。
通称「オキマル」と呼ばれています。

マルバネクワガタは生息する島によって、それぞれ違う種がいて、コレクターが垂涎する対象になっています。
この作品の主人公たちは、このオキマルの幼虫を探しにやんばるの森に入っていく設定。

実は、読んでいるうちにストーリーよりもそちらの方に興味が移ってしまいました。
沖縄の事情(米軍基地・ハブ・島嶼・観光開発・台風……)や生態系について詳しく書かれています。

以前に『クワバカ』のクワガタ採集の章にマルバネクワガタ採集記があったのを思い出しました。
(⇒クワガタの沼にハマった男たちの生態を描いた本『クワバカ』 )

沖縄の過酷な状況でのサバイバルの描写は、鳥や昆虫に詳しい作者ならではの観察眼からくるもので、迫真性があります。

それもそのはず、この作品は『観察者シリーズ』というシリーズものだったのです。
(観察者シリーズの人物が登場するスピンオフ作品

「密林」の雰囲気が味わえる冒険小説

最初は、タイトルに惹かれて読んだのですが、購入を決定づけたのは、あらすじに「クワガタ採集」のキーワードがあったこと。

やんばるの森という亜熱帯の「密林」の雰囲気自然で生きることの厳しさ、怖さ、生命の強さを感じられる作品でした。

作者の鳥飼否宇さんは、鳥類や昆虫に関して本を出すほど詳しい方。
自然に対する畏敬が感じられます。

この作品では、やんばるの森が今も守られているのは、米軍の演習場とハブの存在だと言っています。
それに対して、沖縄は観光を産業としており、「水」を必要としたためにダム建設によって森を壊している。

自然保護と開発に対する問題提起もこの作品でなされていました。

今までは、「自然を壊すのは悪いこと」と感覚的にしか考えていなかったので、勉強にもなりました。

最後に。

初めて読む作家の本でした。
隠さずにいうと、主人公の内面を怒涛のように書き連ねる記述がちょっと馴染めない部分がありました。

ただ、自然環境についての述懐は好きで、自然に暮らす生き物の記述は興味深く読めます。

私もオキナワマルバネクワガタ(オキマル)ではなく、ヤエヤママルバネクワガタ(ヤエマル)の幼虫を飼育した経験(羽化できなかった!)があるので、楽しく読むことができました。

鳥飼否宇さんの『観察者シリーズ』
熱烈なファンがいるようなので、私も続けて読んでみようと思います。

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