こんにちは。山内健輔です。
カブトムシやクワガタって多くの人が一度は通ってきた道ですよね。
でも、いつしか興味が薄れて、遠ざかってしまう人がほとんどです。
ただ、ごく少数の人が、そのままずっと興味を持ち続けて、大人になっても好きでいられる人がいます。
一度は興味が薄れても、大人になってクワガタ好きが再燃する人もいます。
『クワバカ クワガタを愛し過ぎちゃった男たち』という本で紹介される男たちは、人生をかけて自分の理想のクワガタを追い求めている人たち。
実は私もクワガタを飼育していて、この本に出てくる人たちの気持ちが「分からなくもない!」。
むしろ共感できる・・・というか、そんな風になってみたい気持ちがあるのです。
もちろん、そんな勇気はないのですが・・・。
クワガタの沼にハマった男たちの生態を描いた本『クワバカ』
中村 計 著 2020年8月
中村計(なかむらけい)
1973年生まれ。ノンフィクションライター。千葉県船橋市出身。同志社大学法学部政治学科卒業後、某スポーツ新聞社に入社するも七カ月で退職。以降、スポーツを中心に様々なノンフィクション作品を発表している。著書に、『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社、第十八回ミズノスポーツライター賞最優秀賞)、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社、第三九回講談社ノンフィクション賞)、『金足農業、燃ゆ』(文藝春秋)など多数。ナイツ塙宣之の『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)の取材・構成も担当した。好きなクワガタはノコギリクワガタ。
光文社新書『クワバカ』著者紹介 より引用
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確認してから購入することをおすすめします。
こんな人におすすめ!
◯カブトムシ・クワガタ好き
◯昆虫好き
◯没頭することがない人
◯地球環境問題に興味をもつ人
◯テレビ番組「ザ・ノンフィクション」が好きな人
サブタイトルもおもしろいじゃありませんか。
(現在はオオクワガタとヒラタクワガタを少数のみ)
普通の記者やノンフィクションライターの人が取材すると、どこか外側から客観的にみた記事や文章になりがちですよね。
完全にクワガタ愛好家の内部へと潜入して・・・というよりもクワガタたちとそれを追いかける男たちの魅力にとりつかれていく過程がみられます。
クワガタ好きがクワガタを語るとき、誰もが名プレゼンターになる
昆虫好きの人のことを「虫屋」といいますが、虫屋さんたちも共感ポイントは多いはず。
なにかに夢中になること、没頭している人って輝いてみえますよね。
著者は野球関係の本をいくつも出しているのもあって、大谷選手とクワバカたちには共通したものがあるといっています。
クワガタ好きな大人の習性がおもしろい!
↑羽化したての本土ヒラタクワガタ
この本で学べること
- 大人になっても夢を諦めない姿
- 夢中になること
- 没頭すること
- ペットビジネスの問題点
- 環境政策の矛盾
- 環境開発と希少種
本の内容は、
クワガタに人生を捧げた男たち!
の話。
- クワガタ採集に魅了されて、南方の島で人生と命をかけてクワガタを探しに行く人
- 何十万もかけて購入したクワガタで「クワガタバトル」をする人
- カッコいいクワガタをブリードする「クワガタレーティング」
- 昆虫に魅了されてインドネシアに移住した男
世間一般から見たら「そこまでしなくても~」といわれそうなことに、お金も人生も、命も賭けて夢中になっている姿が紹介されます。
どの登場人物たちも「クワガタ愛」にあふれていて魅力的です。
その人物たちが語るのは、
- 現代の昆虫ビジネスの問題や環境政策への疑問。
- ペットビジネスによる乱獲やマナーとモラル。
- 環境開発の影響。
- 希少種の保護と採集
これらの深刻なテーマにも切り込みつつも、おもしろおかしく「クワガタ愛好家」たちを紹介している内容です。
話に引き込まれる文章で読みやすい!
↑わが家で羽化したオオクワガタ
本の特徴
読みやすい文章 | ★★★★★ |
取材がうまい | ★★★★★ |
笑いながら読める | ★★★★★ |
引き込まれる文章が特徴的です。
ノンフィクションなのでもっと俯瞰的な観点かと思いきや、著者がどんどんクワガタの魅力に取りつかれていく様が描写されています。
登場人物たちの魅力をうまく引き出す構成と文章。
自分ひとりで「ハブのいる森」に採集にいく(命を賭けて)取材。
(私はこの部分がいちばんドキドキ・ワクワクしておもしろかった!)
ひとつの物語を読んでいる感覚になりました。
取材対象の人間味を引き出す、懐に入り込む術がうまいんだなぁと感じます。
ひと口に「クワガタ好き」といってもジャンルはいろいろ。
- 野外採集マニア
- クワガタ相撲
- ブリーディング
- 標本蒐集
クワガタや甲虫類が好きな人は聞いたことがある人物たちがちょこちょこ出てきます。
図鑑や飼育本などに名前がのっている人たち。
どんな人物かは全然知らなかったので、その方たちの人間性が垣間みられて興味深く読めました。
幸せってなんだろう?
↑わが家で羽化した立派な大歯型のノコギリクワガタ
夢中になることを忘れてしまっていた私たちにとって、この本に出てくる人物たちはみんな輝いてみえます。
本人たちは両親や家族たちに申し訳なさを感じているようですが、やりたいことをやり遂げようとする強さは尊いものです。
私も登場人物たちと同世代なんです。
同じ昆虫好きとして、この登場人物たちの気持ちが理解できます。
自虐的におもしろく書かれているので笑いながら読めますが、ちょっと羨ましい気持ちもあります。
一般から見たら「狂っている」ようにみえるかもしれませんが、本人たちがやりきって幸せを感じている姿はカッコよくみえるんですよね。
クワガタの本を読んでいるつもりが、思わぬところで幸福って何かを考えさせられました。
情熱でUMAを探しに行った人々の話!クワバカに似ている?!
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最後に。
↑秋田県で採集したアカアシクワガタ
「クワガタ愛好家が集まると、採集の話がいつの間にかハブの話で盛り上がる」という記述があります。
私は南の島で採集の経験はありませんが、「わかるわかる!」って気持ちで読んでいました。
真っ暗な闇の中は恐怖そのもの。
懐中電灯とヘッドライトの頼りない明かりの心細さ。
マムシやイノシシなどの危険、心霊的な怖さもあります。
そこでクワガタを見つけたときの喜び。
本書ででてくるクワバカたちの経験には遠く及びませんが、楽しんで読了することができました。
共感と羨望と懐かしさを感じられた247ページです。
自分の子どもにも読ませたいような、読ませたくないような・・・不思議なノンフィクションです。
「クワガタの生態」じゃなくって「クワガタ愛好家の生態」を書いた本、一度は読んでみてほしい本です。
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