痛快ノンフィクション『幻獣ムベンベを追え』ロマンを探しに!

こんにちは。山内健輔です。

年齢を重ねてくるとどうしても、冒険をしたくてもできない、冒険する勇気がない、こんな気持になってきます。
でも、忘れかけていたロマンを思い出させてくれるノンフィクションに出会いました。

その名も『幻獣ムベンベを追え』
ご存じの方もいるかと思いますが、ムベンベとは「モケーレ・ムベンベ」のこと。

アフリカにいるといわれている未確認生物で、そのスジでは有名な無類に入ります。
その姿は太古の昔に生息していた竜脚類に似ているともいわれていました。

著者の高野秀行さんは早稲田大学に在籍当時、そのモケーレ・ムベンベを探しに行く冒険を経験しています。

この本を執筆したのは、まだ大学に在籍中。
過酷な体験をユーモアを交えた筆致と正確な記録は、目を見張るものがあります。

今回は、そんなハチャメチャ痛快ノンフィクションネタバレなしで紹介していきましょう。

『幻獣ムベンベを追え』高野秀行 著
2003年1月(集英社文庫)

痛快ノンフィクション『幻獣ムベンベを追え』ロマンを探しに!

※ご注意
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若い気持ちを失いつつある人へ!

こんな人におすすめ!
未確認生物(UMA)に興味がある
サバイバル生活に憧れる
冒険してみたい
若さをもてあましている
ロマンを忘れかけている

40代以降の人は覚えているかもしれませんが、テレビ番組に『水曜スペシャル』(スイスペ)がありました。
「川口浩探検隊」などのシリーズがあり、子供ながらに未知の生物を探したり、アマゾンの奥地を探索したり・・・のワクワクする番組です。

もちろん私が大好きだったのは、「川口浩探検隊」。
今思えば、ツッコミどころは満載なのですが、当時は私も小学生。
どんな冒険が待っているのか、夢中でみていました。

この『幻獣ムベンベを追え』もそんなワクワク感があります。

そもそも未知の生物を探すだけでも興味をそそられるのに、ジャングルでのサバイバルピグミー族の話現地住民との儀式などなど魅惑的なキーワードの数々。

高野さんが探検した当時、日本とコンゴは国交を結んでおらず、入国するのも苦労するほどでした。
それに加えて、社会主義だったこともあり、ムベンベの調査には困難を極めるものだったのです。

そんな困難を乗り越えて実現させた、若者のロマンを追う旅。
見てみたくはありませんか?

読みやすい痛快ノンフィクション

『幻獣ムベンベを追え』の特徴です。

  • UMA(未確認生物)を探しに行った早稲田大学探検部の話
  • 現地での認識は「なにか黒くて大きいもの」
  • モケーレ・ムベンベを見つけられるか?
  • ユーモアのある文章
  • 過酷な探検の旅
  • 1988年の調査体験のノンフィクション

この手の本は、どうしても好き嫌いが分かれます。
ただし、この記事を読もうと思ったあなたは、たぶん好きな部類に入るはず。

文中には、無数の虫の話や現地で捕らえた生き物を食する場面ほか、湿地での生活や熱病との闘いなど過酷な体験の記述があります。

が、ユーモアのある文章で、物事を冷静に捉える視点で描かれているため、読んでいて安心感があるのです。

太古の昔からコンゴ奥地の湖に棲息するという謎の怪獣・モケーレ・ムベンベ発見を賭け、赤道直下の密林に挑んだ早稲田大学探検部11人の勇猛果敢、荒唐無稽、前途多難なジャングル・サバイバル78日。子供の心を忘れないあなたに贈る、痛快ノンフィクション。

集英社『幻獣ムベンベを追え』紹介ページより引用

クレバーながらも無鉄砲な若さがみどころ

舞台は、コンゴにあるテレ湖。
広大な湿地のなかにある湖で、周囲は6kmほど。

早稲田大学探検部の有志と社会人の混成チームがモケーレ・ムベンベの痕跡を求めて調査するプロジェクト。
その名も「CDP」(コンゴ・ドラゴン・プロジェクト)。

テレ湖に存在するといわれている怪獣を探すために立ち上がった若き勇者たち。
CDPの遂行は困難を極めます。

  • 物資と資金と情報を集めること
  • コンゴに入国すること
  • 調査地への到達方法
  • 現地民との軋轢と協力
  • 衛生問題と感染症(マラリア
  • 資金と食料の枯渇

次々に勃発する問題への対処に思考をとられて、本来の目的である「モケーレ・ムベンベ」探索のことを忘れてしまいそうになるほど。

これだけ問題が続出すると嫌になりそうなものですが、探検隊のメンバーはどこ吹く風。
むしろ楽しんでいるようにさえ見えてきます。

もちろん、彼らも準備を怠っていたわけではありません。(決して無謀だとはいえない!)
事前に下調べに出向いていたり、現地の言語(リンガラ語)を学んでいたり、企業や政府を回って協力を仰いだり、できうる限りの万全を期していました。
私がイメージする大学生よりも、よほどクレバーなイメージです。

そんな男たちが、ロマンを求めて密林をさまよい歩き、コンゴ政府関係者、現地民を巻き込んでのハチャメチャな物語。

しかも、おもしろおかしく体験談を語っているだけの内容ではありません。

  • 民族の信仰心
  • 生物への意識と食糧観
  • 政治と少数民族
  • 文明の発達と民族
  • 人の命と夢を追うこと

このような社会的な問題もとり挙げられています。

情熱的で衝動的、楽観的で無邪気で、純粋でクレバー。
彼ら探検隊メンバー読んでいると、困難も社会問題も「なんとかなるさ」で解決されてしまうような気がしてくるから不思議です。

何よりも注目したいのは、作者の筆致。
現地の人々とコンゴ政府関係者が感情あらわにやり合っているのに、コミカルにおもしろく描く。

現地語をほぼ理解しているのに、「わからないふり」で通す。
クレバーなのか、薄情なのかどっちなの?と思いきや、それでうまくいくっていう展開は、痛快で爽快なストーリーです。

CDPチームは、探検部の面々とコンゴ政府関係者、それに現地ガイドを加えたメンバーで構成されています。
メンバーたちの友情や確執、メンバーと村の酋長との対決の様子はフィクションを読んでいるようです。

で、読んでいる途中、そちらのストーリーが気になってしまって、完全にモケーレ・ムベンベを忘れてしまっていました(笑)

忘れかけた冒険心を思い出させる作品

怪獣を探すはずが、何やら別の方向に労力を使うハチャメチャな展開になる話。
過酷で悲惨な状況なのに、文体がコミカルなので楽しく読めます。

若者のエネルギーを感じられる作品で、やりたくてもできない自分、やる勇気がない自分を彼ら探検隊に投影してしまう作品でした。

  1. 現地の言語(リンガラ語)を覚えてコミュニケーションをとる本気度と行動力。
  2. ノリと勢いで行動してしまう怖さと羨ましさ。
  3. 人を巻き込む情熱と秘境のワクワク感。

エネルギーとロマンに満ちた爽快な気持ちにさせられました。
もっと読んでいたくなります。

冒険・探検ものが好きな人には読了をおすすめします。

最後に。

高野秀行さんの書籍を見てみると、興味深いタイトルの本がたくさんありますね。
まだ、私はこの『幻獣ムベンベを追え』しか読了していないので、ぜひ他の作品も読んでみたくなりました。

追伸。
テレ湖と周囲の川は調査済みのようなので、次は周辺のジャングルも創作してほしいです。
竜脚類なら陸上で生活している可能性もありますからね(笑)

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