こんにちは。山内健輔です。
世の中には数々の漂流・漂着ストーリーがあります。
でも、その中の多くがフィクション(創造)です。
実話を基にしていても脚色されているものがほとんど。
『無人島に生きる十六人』は、明治時代に本当にあった海洋遭難の実話です。
1899年に起きた『龍睡丸遭難事件』。
生き残った船長・中川倉吉が教え子に話した冒険譚が書籍化されたものです。
内容は・・・・・・痛快!
解説で椎名誠氏が表現した通りの作品です!
現代を生きる私たちは、彼らの勇気と能力に学ぶべき点が多くあります。
ぜひ一度読んでみてほしい本ですよ。
2003年6月(新潮文庫)274ページ
(もとは1943年に刊行)
『無人島に生きる十六人』明治時代の実話だった!痛快ノンフィクション
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確認してから購入することをおすすめします。
組織経営に活かせるサバイバルストーリー
◯小中高校生
◯冒険物語が好き
◯前向きになりたい
◯組織経営を学びたい人
あらすじは、
大嵐で船が難破し、僕らは無人島に流れついた! 明治31年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し、脱出した16人を乗せたボートは、珊瑚礁のちっちゃな島に漂着した。飲み水や火の確保、見張り櫓や海亀牧場作り、海鳥やあざらしとの交流など、助け合い、日々工夫する日本男児たちは、再び祖国の土を踏むことができるのだろうか? 名作『十五少年漂流記』に勝る、感動の冒険実話。
新潮社『無人島に生きる十六人』紹介ページより引用
小学生ぐらいから読めます。
児童文学にカテゴライズされているようですが、大人も充分に楽しめる一冊。
絶望から自暴自棄になったり、資源を奪い合い仲間割れをしたり・・・・・するのが王道の無人島小説ですが、実際にはそうならないのかもしれない!?
な~んて想像させる物語です。
生命の危機に瀕したときに、人間はどう動くのか、どう仲間を導くのか、大切なことはなにか、いろいろなことを教えられる物語。
現代の私たちが見習うべきことが数多くあります。
そして、私が注目したのは船長・中川倉吉の「組織経営」。
自分を含めた十六人が、生き延びるために、楽しく生活するためにしたこと。
現代社会で参考になりそうなヒントがたくさん詰まっていますよ。
小説のようだがノンフィクション!
この本の特徴は、
- 生き残った船長が教え子に語った体験談
- 小説のようだがノンフィクション
- 明治32年に起きた龍睡丸座礁事故の実話
- 読了まで3~5時間
- 明るく楽しい
- 子ども~大人まで楽しめる
冒険家の椎名誠さんは解説で、”痛快!十六中年漂流記”と表現しています。
もちろん対比しているのは、有名なジュール・ベルヌの『十五少年漂流記』。
冒険譚(冒険の物語)好きな人は、すでに読んでいるかもしれませんが、両方とも乗っていた船が遭難して無人島に漂着する物語です。
このふたつの物語は、共通点も多いですが、決定的に異なる点があります。
そう、『十五少年漂流記』はフィクション(創作)であるのに対して、『十六中年漂流記』いや『無人島に生きる十六人』はノンフィクションなのです。
正直に言うと、椎名誠さんの解説を読むまではフィクションだと思っていました!
1899年(明治32年)に起きた龍睡丸遭難事件の話です。
著者の須川邦彦氏が当時の船長だった中川倉吉氏から聞いた話を書いたもの。
悲壮感や絶望感がなく、明るく楽しい無人島生活を送っているようにみえることから、完全に「小説」だと勘違いして読んでいたのです。
子どもから大人まで楽しめる、読了時間は3~5時間の本です。
本当にあった愉快で痛快なノンフィクション。
忙しさに人とのつながりが薄れかけている現代の大人にもぜひ読んでほしい物語だと感じました。
楽しく生活するための規律は4つだけ?!
『無人島に生きる十六人』のみどころは、やりがいと規律を両立させるための「規則」。
物語では大きな混乱もなく、全員が助け合って、思い合って愉快に生活する様子が描かれています。
そのための規則は4つだけ。
- 島で手に入るもので暮らす
- 出来ない相談は言わない
- 規律正しい生活をする
- 愉快な生活を心がける
たったこれだけの規則で、16人のチームが互いに敬意をはらいながら生活していく姿は、社会で生活する私たちも見習いたいところ。
しかも「②出来ない相談は言わない」「④愉快な生活を心がける」はなかなか痛快な規則ではありませんか。
この2つは組織を潤滑にさせる最適な方法です。
船員たちは知恵と体力を出し合い、尊敬し合うことで「あっぱれ」な成果を挙げることができました。
もちろん、船長のリーダーシップに加えて、海の男たちの強さ、素直さがあればこそなのかもしれません
さまざまな困難に立ち向かうとき、チームで大きな成果を挙げたいとき、組織がうまくいかなくなったとき、そんなときにこの「4つの規則」を思い出して立ち向かえる勇気をもらえた気がします。
生死の危機を愉快に乗り切るおもしろさ
多くの創作ストーリーでは、たいてい大きな困難が主人公たちの前に立ちふさがることが常です。
ですが、『無人島に生きる十六人』では、限られた資源、過酷な環境で愉快に暮らす16人の男たちの姿を描きます。
実話なので、もちろん登場人物も実在しました。
この話は船長の体験談として語られています。船長は思慮深い人物。
もしかしたら、無人島生活では大きな問題も生じたかもしれません。
きっと、そういった問題も他言せず胸にしまっておいたのかも?
・・・・・・なんて、勝手に想像しながら読み進めてしまいました。
船長のリーダーシップ、それを支える老人(といっても50歳ぐらい)の存在。
船長がつくった4つの規則。不平を言わず協力した仲間たち。
現代社会で生きる私に大きな教訓を与えてくれた書籍です。
自分の役割を全うして、社会に生きる一員として誰かの役に立つこと。
そんな夢を抱かせる物語でした。
最後に。
江戸時代の実話をもとにしたノンフィクションストーリー、吉村昭著『漂流』から100年後の明治時代にあった龍睡丸遭難事件の話です。
『漂流』も一緒に読むとまた違った雰囲気でおもしろさ倍増ですよ。
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『無人島に生きる十六人』は、聞く読書「Audible」にも収録されています。
目を使わずに読める読書なので、頭に直接語りかけられるようです。
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