こんにちは。山内健輔です。
現代でも新選組は高い人気を誇っていますね。
要因は、やっぱり新選組隊士たちの個性と儚い結末によるものも大きいと思われます。
その新選組隊士たちのキャラクターを世間に浸透させた一人が、司馬遼太郎といえます。
有名な『燃えよ剣』では、土方歳三を主人公に据えて、周囲を固める幹部たちを中心に幕末の新選組を描きました。
それと同時期に執筆された『新選組血風録』では、時代の流れにほとんど関係のないエピソードを書くことで、幕末に生きた新選組隊士たちの悲哀を世間に広めることになりました。
最初に出版されてからすでに60年以上も経っていますが、色褪せることなく多くの人に読まれている15編の短編からなる小説です。
有名無名の新選組隊士たちの心情が巧みに表現されていて、新選組ファンの評価も上々。
今回は『新選組血風録』をネタバレなしで紹介していきます。
2003年11月(新装版) 角川文庫
(もとは1964年出版)
司馬遼太郎『新選組血風録』冷徹集団といわれた男たちの人間ドラマ
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確認してから購入することをおすすめします。
新選組ファンは必読の書!
◯新選組ファン
◯幕末好き
◯読みやすい歴史ものを探している
◯司馬遼太郎を読みたい
おすすめの人は、やっぱり新選組を読みたい人!
幕末~明治維新に興味のある人、司馬遼太郎好きにももちろんおすすめ。
新選組隊士のエピソードが15作。
短編ですが、短すぎず長すぎない、本当にちょうどいい長さの短編です。
最初に出版されたのが1964年。
すでに60年経過していますが、歴史小説を読んだことがある人なら読みやすい文章です。
『燃えよ剣』では時代の流れと関係するエピソードが描かれていますが、『新選組血風録』では、時流とは別のエピソードが満載。
この2つの小説をきっかけに新選組のファンになる人も多数いるほど。
シリーズものではないのですが、一緒に読んでみるとおもしろさが倍増します。
ぜひ読んでみてほしい作品なのです。
『燃えよ剣』の番外編短編集15作
司馬文学の傑作にして、新選組小説の代表作が、読みやすい新装版で登場!
勤王佐幕の血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京洛に、その治安維持を任務として組織された新選組。騒乱の世を、それぞれの夢と野心を抱いて白刃とともに生きた男たちを鮮烈に描く。司馬文学の代表作。
角川文庫『新選組血風録 新装版』紹介ページより引用
この小説の特徴は、
- 『燃えよ剣』の番外編のような感覚で読める
- 『新選組血風録』のエピソードをもとにした作品も多い
- 読みやすい文章
- キャラクターが丁寧で秀逸に描かれている
- 1話がちょうどいい長さ
- 同時期に書かれた『燃えよ剣」といっしょに読みたい
- 60年経ってもおもしろい
どの短編も完成度が高いのが特徴です。
あまり知られていない隊士の物語は、興味深く、感情移入して読むことができます。
有名な隊士の物語は、時代の本流のストーリーにはない切り口で描かれます。
読み進めているうちに、どの人物にも好感をもって思い入れられるようになりました。
それぞれ独立しているのでどちらから読んでもOK。
ただし、『新選組血風録』は『燃えよ剣』の番外編のように読めるので、どちらもまだ読んでいない人は、『燃えよ剣』を先に読むことを推奨します。
⇒『燃えよ剣』(小説)は司馬遼太郎の最高傑作。ラストに注目!
幕末の京都で怖れられた男たちの人間味
「幕末」という異常な時代の政治の中心だった京都で、怖れられた新選組。
それを構成した一人ひとりの隊士たちにスポットを当てた短編は、それぞれの人間味をあぶり出すストーリーがみどころ。
叙事的に綴られる文章なのに、主人公や脇役たちの心情がうまく表現されている筆致の巧みさが光ります。
それに加えて、人物たちの人間味や性格を表現するためのエピソードたち。
どれが創作で、どれが史実かわからないほど溶け込むように描き出されています。
『新選組血風録』に収録されているエピソードは、ほとんどが時代の流れとは関係ないものです。
幕末の本流を書いた小説の多くでは、取り残されてしまうような逸話ばかり。
でも、異常な時代に、異常な組織に生きた新選組隊士たちの魂が描き出されているように感じます。
多くの小説ではスポットの当たらない人物も多く書かれているので、新選組ファンもそうでない人も楽しめる作品といえるでしょう。
主人公たちの心情が巧みに表現
15の短編作品の中で私が印象に残ったのは、沖田総司の物語。
『沖田総司の恋』
『菊一文字』
やっぱり新選組の隊士の中でも人気はトップクラス。
無邪気な性格でありながら、腕は随一、平然と敵を倒す人物の心を描き出した作品です。
沖田総司が、新選組のほとんどの作品で「天真爛漫」(てんしんらんまん)な人物として描かれているのも、司馬遼太郎の作品によるところが大きいのではないかと思うのです。
また、主人公ではなく、登場人物の一人として描かれる土方歳三や斎藤一、永倉新八の姿も印象に残ります。
主役ではないものの存在感はピカリと光るのです。
司馬作品は人物のキャラクター設定が他の作品にも共通しているので、シリーズものを読んでいる感覚で読めます。
とりわけ、司馬作品では土方歳三、沖田総司、斎藤一あたりに思い入れがありそうです。
他の隊士たちから見た彼ら新選組幹部の面々の評価もおもしろく読めますよ。
最後に。
『新選組血風録』は、一冊読んだだけで15冊分読んだような濃密な作品です。
読み終わったあとは、その読み応えから達成感を感じるほど。
「新選組」の小説であるため、戦闘の場面は数多いです。
しかし、淡白に描かれるので苦手な人もそれほど痛みを感じないで読めるのではないでしょうか。
『燃えよ剣』と併せて司馬遼太郎の幕末作品の傑作ともいえる作品です。
時間をかけてでも読む価値のある一冊といえましょう。
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