『誓約』薬丸岳著。幸せな風景から一転、予想もつかない真相へ!

こんにちは。山内健輔です。

「ハズレ」がないといわれている作家、薬丸岳さんの小説は、社会問題を取り入れたストーリーが多いのが特徴です。

『誓約』薬丸岳
(幻冬舎)2015年3月

今回紹介する『誓約』のテーマは、「犯罪被害者の心理」「加害者の罪と罰」

なかなか重たいテーマですが、いつも通り読みやすい文章なのでスラスラ読み進められます。

重いテーマにどっぷり浸かって思考を巡らせるのもよし。
ミステリーとして黒幕を予想するのもよし。
読みものとして一気に読み切ってしまうのもよし。

人によって、時期によっていろんな読み方ができる小説です。
ストーリー自体は、読みやすい文章もあってか、それほど長くはないので、一気読みも可能。

まだ読んでいない人は一度読んでみてくださいね。
今回もネタバレなしです!

誓約』薬丸岳著。幸せな風景から一転、予想もつかない真相へ!

※ご注意
記事執筆時点の情報です。記事ではできるだけ正確な情報を公開することを心がけていますが、金額、内容、出版社、その他の情報が変更されている場合があります。
確認してから購入することをおすすめします。

おすすめの人

こんな人におすすめ
薬丸岳ファン
ハラハラする小説が読みたい
◯人を傷つけてしまったことがある人
一気読みできる小説を探している
今回のテーマは「犯罪による明るい将来への枷」。
なかなか重いテーマですね。
私がこの本を手にとった理由は、同じ著者が書いた『ハードラック』を読んで、関連作品として紹介されたから。
最近はネットで本を購入すると、いろいろな関連作品が提案されるのでついつい手を伸ばしてしまうんですよね。
で、この『誓約』を読んだ感想は、おもしろい!
レビューを見ていると高評価と低評価の両方が混ざっています。
難しいテーマなので、人によっていろんな読み方があるからでしょうか。
薬丸作品は、イメージしやすい、読みやすい文章が特徴で、『誓約』も通勤電車内で4~5時間で読了してしまいました。
社会で問題になっている、重めのテーマを扱っているので、深く考えながら読むとほろ苦い味わい
また、軽い感じで読みものとして一気に読み進めるとまろやかな味わい
ミステリーやサスペンスとして推理しながら読むとコクを感じる味わい
そんな小説(どんな?)です。
ワタシ的には、あまり深くまで考えすぎるとほろ苦さも感じてしまうので、物語を楽しみながらエンターテイメントとして読んでみてほしい作品です。

特徴;予想できない真相

この作品の特徴は、

  • 一気読みできる
  • エンターテイメントとしておもしろい
  • 幸せな風景から一転……
  • ミステリー
  • サスペンス
  • 読みやすい
  • 心理描写が巧み
  • 登場人物は少なめ

読んでいて苦しくなることも否定できません。
ですが、それよりも先が気になって次々とページをめくってしまうんです。

ミステリーではありますが、ちょっとホラーな部分もあり、予想しながら読むというよりは展開がどうなるのかを楽しみながら読んでいくサスペンス要素が強い作品です。

テーマは少し重ため。
かといって、読みやすく書かれているのでスラスラと一気読みできる小説です

みどころ;犯罪と被害者家族の心理

幻冬舎の『誓約』紹介ページからの引用です。

一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。

捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。

一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。究極の問いを突きつける長編ミステリー。

幻冬舎「誓約」紹介ページ

みどころは、

  • 被害者家族の心理。
  • 過去の犯罪の罪と罰。
  • 主人公と脅迫者の心理戦
  • 自分の贖罪と家族の幸せ
  • 追い詰められた者の選択

犯罪被害者の家族の悲しみがどんなものかをうまく描写している作品です。
物語の構図は、過去の犯罪加害者と大切な人を失った者の対立を軸にしています。

ドキドキハラハラの心理戦も展開されて、物語がどう進むのか予想もつきません。

読み進めていても、誰が「正義」なのかわからなくなる展開で、誰を応援すればいいのかもわからなくなるんです。

難しいテーマを扱っていますが、後半一気にストーリーが展開してきて映画を見ているように、あっという間に読み終えてしまいます。

 

感想;予想できない真相にビックリ

ずいぶんと考えさせられる作品でした。
もちろん犯罪は悪いことです。

ですが、犯罪や故意ではなくても、誰かを傷つけてしまうことはあるかもしれません。
もしかしたら知らないうちに「被害者」を生んでしまっているかもしれないのです。

『誓約』の主人公は、過去に犯罪で人を傷つけてしまった男。
服役したあとも、罪を重ねてしまった過去をもちます。

そんな男が幸せを手に入れたときから、復讐が始まっていたのです。

読み始めた最初は幸せな風景で「おもしろそう~」と思って読んでいました。

が、ある手紙が届いてから物語の様相が一変します。
その後は、自分が脅迫されているような印象を受けるような気持ちになるような展開でした。

ですが、その後の物語が気になって読み進めると、予想外の展開に最後まで楽しむことができました。

読む人によって、主人公の印象は変わるかもしれません。
人それぞれで楽しみ方があり、考えさせられる作品です。

でも、読後感は悪くありません。

「罪と罰」をテーマにした誉田哲也の作品もおすすめ

関連記事

こんにちは。山内健輔です。 人気作家の誉田哲也さんの作品の中でも、根強い人気の「姫川シリーズ」。 個性的なキャラクターが躍動するシリーズで、多くの作品が出版されています。 『感染遊戯』はその中のひとつですが、番外編になっていて[…]

最後に。

薬丸作品は、やるせないストーリー展開の最後に慈悲のある教訓を残す作風が多いですね。

テーマは全く違いますが、薬丸岳作品の『ハードラック』に似た空気感をもっています。
この作品が気に入ったら、一緒に読んでみてくださいね。

関連記事

こんにちは。山内健輔です。 今回紹介する小説は、派遣切りにあって生活に苦しむ若者が主人公の物語。 「ワーキングプア」とか「ネットカフェ難民」、「派遣切り」「闇バイト」「振込詐欺」など現代社会で大きな問題になっている現実を背景にし[…]

関連記事

貴志祐介の作品『悪の教典』はホラー要素強めの作品
怖いけど読み続けちゃう小説『悪の教典』貴志祐介著
柴田哲孝『デッドエンド』はハラハラの連続
小説『デッドエンド』(柴田哲孝)はエンターテイメント色濃厚な作品
『光射す海』は科学と人間臭さの融合した小説
『光射す海』鈴木光司著。作り込まれたストーリーに圧倒される小説。
誉田哲也の明日の自分に勇気を与えてくれる作品。
今の自分に勇気を与えられる小説『幸せの条件』誉田哲也著