クワガタ採集に行く前に読んでおきたい本『米が育てたオオクワガタ』

こんにちは。山内健輔です。

私は子供のころから生き物が好きでした。
今もその傾向は続いていて、カブトムシやクワガタを採集して、飼育して、繁殖もさせています。

私が子供のころは、オオクワガタは憧れの存在。
デパートのイベント会場で標本をみるのが精一杯で、生きている姿なんてみたこともないぐらいでした。

昆虫の図鑑には必ず載っているのに、「いったい、どこにいるんだよ~?」という思いでいたのを覚えています。

それが今では、ホームセンターで容易に手に入る時代。
自分で飼育できることが嬉しい反面、こんなに安易に手に入れてはいけない存在のような気もしている今日このごろです。

そんな中で出会った本があります。
クワガタ好きの中年以降の人なら知っている人も多いハズ、山口進さんが書いた本です。

『米が育てたオオクワガタ』山口進 著 
2006年7月 (岩崎書店)
オオクワガタの生態を解き明かした伝説の人物でもあります。
オオクワガタの生態と過熱した採集ブームに対して、優しく警鐘を鳴らしてくれる本です。
クワガタだけでなく、昆虫を採集する前に頭に入れておきたいことが多く書かれています。
子ども、大人一緒に読むべき本です。

クワガタ採集に行く前に読んでおきたい本『米が育てたオオクワガタ

※ご注意
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確認してから購入することをおすすめします。

昆虫採集する人に読んでほしい

こんな人におすすめ!
◯クワガタ好き
◯自然が好き
◯田舎暮らしがしたい
◯昆虫好き
◯40代以降の少年おじさん

オオクワガタと人間の暮らしがどのように関わってきたかを解明していく本です。

子どもの読書感想にも最適で、人々が自然とどんな関係をもっていたかを知ることができます。
著者は昆虫カメラマンだけあって、本の中に出てくる写真は素晴らしいものばかりです。

※著者の山口進さんは、ジャポニカ学習帳の表紙写真を撮影していた人物。

文体も児童向けに書かれているので、難しい表現はなくて、小学校高学年以上なら理解しやすいのも特徴です。

だからといって、対象は子どもに限っているわけではなく、大人も充分におもしろい本だといえます。
むしろ、大人が読んでほしい本なんです。

文中には、人気になったオオクワガタを採集にくる人々の行為についても触れられています。

オオクワガタは、限られた生息環境でしか反映しにくい性質をもっていることにも触れ、採集には細心の注意も必要だと著者は感じています。

私も含めて昆虫を採集するときに頭に入れておいてほしいことがたくさん書かれているんです。
昆虫採集に行く人には読んでおいてほしい本です。

本の特徴・どんな本?

『米が育てたオオクワガタ』の特徴は、

  • 児童向けの文章
  • 丁寧な説明
  • 理解しやすい
  • ノンフィクションのようなエッセイ
  • オオクワガタの生態を説明

文章は基本的に「優しい目線」から書かれている印象です。
児童向けの本だからかもしれませんが、簡単な言葉丁寧な記述によって、誰でも理解しやすい内容といっていいでしょう。

かといって、大人には物足りないかというと、そうではありません。

このような本を読み慣れた人でも満足のいく情報のボリュームとクオリティをもっています。

多くは人と雑木林のシステムについて紹介しているのですが、「里山」のことを知らなくても理解しやすく、知らなかったことも多く書かれていますよ。

みどころ;里山とオオクワガタの関係

この本のみどころは、

農業とオオクワガタの関係

里山に暮らすオオクワガタの生態を解明することによって、オオクワガタのいる環境を守りたい!」という作者の強い思いが感じられます。

詳しくは本を読んでほしいのですが、ちょっと触りだけ。

刈敷農法(かりしきのうほう)で使用するクヌギの若枝をヒトが利用することで、台場クヌギ(お化けクヌギ)ができる。→オオクワガタの生息場所になる!

※刈敷農法(かりしき・かしき)
山梨県近辺では「カッチキ」といわれ、山の草木を畑や水田に踏んで敷くことで肥料として利用される農法。
稲が若木や草に守られることで、倒れたり獣に食べられるのを防ぐ。山野に近い農家で伝統的に行われていた。
※台場クヌギ
刈敷や薪(まき)、炭焼き、ホダ木(キノコの菌床)として利用されるために、根元近くで伐採されたクヌギ。
クヌギは切られた場所の近くから脇芽を出して再生するので、いびつな形になった木が里山近くにできる。
みどころ、
  • ヒトの里山生活がオオクワガタを育んだ面がある。
  • 里山の生物多様性にヒトの生活が貢献していた。
  • 雑木林に暮らすオオクワガタの生態
  • 農業の手法の変化と雑木林の変化がリンクしている

クワガタ好きだけでなく、生き物好きの人なら読んでいて楽しくなる話がたくさん載っています。

宅地や娯楽施設への開発により減少したり、笹が伸びて荒れてしまったりしている雑木林が増えてしまっている現状があります。

里山はヒトと生き物が棲み分ける緩衝地帯にもなっています。
この本が里山と雑木林のあり方を見直すきっかけになってほしいですね。

 

感想;野生のオオクワガタを守りたい!

本のタイトルを見て、始めは米を幼虫が食べて大きく育つ話かと思ってしまいました(笑)

強く印象に残ったのは感情だけに訴えるのではなく、論理的に雑木林を守る必要性を説いていること。

  1. 便利になりすぎることで生き物が生きにくい世界になった。
  2. 土地に手を加えることで生き物の種類が変化していく。
  3. 採集マナーやペット業者への不満。

著者の山口進氏はオオクワガタの生態を公表することで、「オオクワガタブーム」が起きてしまったことを悔やんでもいます。

ヒトがつくった環境(雑木林)で気持ちよく暮らしていたはずのオオクワガタ。
それがまたヒトの手で絶滅してしまいそうになっていること。

私にとってオオクワガタは憧れの存在です。
自然の中で見たこともなかったことから、手つかずの自然の中で暮らしているのだと考えていました。

ですが、ひと昔前には、すぐ身近にひっそりと暮らしていたんだなぁと思うとちょっと嬉しくも感じました。
同時に雑木林を守るために、私にもなにかできるだろうかと考えるようにもなりました。

最後に。

 

里山と雑木林はヒトと生き物の共生の場になっていたことは、いろいろな本でも紹介されています。
この本では私も飼育している「オオクワガタ」を通して、里山と雑木林の有用性を知ることができました。

この本を書いた山口進氏は『カブトムシ山に帰る』という本でも里山と雑木林の生き物について触れています。
一緒に読んでみるとより一層理解が深まると同時に、著者の生き物たちへの愛情と優しさを感じることができますよ。

『カブトムシ山に帰る』を紹介した記事

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