柴田哲孝著『幕末紀 宇和島銃士伝』新しい幕末小説を探している人へ

こんにちは。山内健輔です。

今回紹介する小説は幕末の物語。

主人公は、作者・柴田哲孝の高祖父(ひいおじいさんのお父さん)である柴田快太郎

なんと幕末時には、宇和島藩(現在の愛媛県あたり)の藩主・伊達宗城のお気に入りの家臣だったとか。

柴田家に実在する資料を研究して、足りない部分を創作したフィクションです。

フィクションではありますが、存在する手紙や家系図などの記録をもとにした現実味あふれるドキュメンタリーのように読める作品。

主人公の柴田快太郎だけじゃなく、その主君である伊達宗城の人柄も魅力的に書かれています。

私の好きな作家さんのひとりでもある柴田哲孝初の歴史もの。

『幕末紀 宇和島銃士伝』柴田哲孝著
2021年5月 角川春樹事務所(単行本) 2023年11月光文社文庫(文庫本)
今回もネタバレなしで紹介していきましょう。

柴田哲孝著『幕末紀 宇和島銃士伝』新しい幕末小説を探している人へ

※ご注意
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ひと味違った幕末小説が読みたい人へ

こんなひとにおすすめ!
幕末に興味がある
柴田哲孝ファン
客観的に幕末を見ている気分になりたい
◯歴史ファン
代々、柴田家に残る家系図や日記、手紙などを分析した内容に作者がフィクションを付け加えて物語にした作品です。
幕末小説というと佐幕派(江戸幕府寄り)か倒幕派(天皇中心の政府を作る)どちらかに偏った見方をするものが多いのが特徴ですが、この小説はどちらにも顔が利く人物が主人公。
歴史上にでてくるスターたちと交流をもち、幕末の主要な事件を間近で体験している気持ちにさせてくれます。
まるでドキュメンタリーを読んでいるみたいです。
何でもこなせるスーパーヒーロー的な主人公といっしょに幕末の数々の陰謀を解き明かしていくような構成になっているので、歴史ファンはもちろん、柴田哲孝の小説が好きな人も満足できるはず。
時代背景が多少ややこしい時期なので、幕末時代の流れをおおまかに分かっている方が読みやすいかもしれません。

ドキュメンタリー風に描かれる幕末の事件

この本の特徴は、

  • ドキュメンタリー風の小説
  • 著者の高祖父が主人公
  • 家系に残る資料を基にした小説
  • 歴史的事件の目撃者のような感覚
  • 幕末ワールドへ引き込まれる
  • 「追記」で解説がある

この本の最大の特徴は、読みて自身が幕末の事件を体験しているかのような感覚で読み進められること。

物語は、ドキュメンタリーのように展開されます。
作者の筆力のおかげか、幕末時代にタイムスリップしたように引き込まれるのです。

読者は、桜田門外の変から始まって、寺田屋事件、池田屋事件、蛤御門の変などほとんどの大きな事変を身近に目撃することになります。

章ごとに「追記」があって、どこまでが創作なのかを推測することができますが、ストーリーを読んでいるとどれも本当にあったかのようです。

子孫が残された資料から幕末を紐解く!

この本のみどころは、やっぱり著者の高祖父である柴田快太郎がどのような生涯を送ったのかってこと。

現実の資料に残っている日記や手紙を基にしているだけあって、リアリティも感じられる歴史小説になっています。

しかもポイントは、四侯会議のひとりである宇和島藩の伊達宗城の密偵という設定にしたこと。
伊達宗城は幕末時代に先見の明があったとされる人物で、国産の蒸気船を造ったり、新型銃を集めてみたり……、おもしろい人物でした。

他にもみどころはたくさんあります。

  • 幕末時代の銃装備の差をわかりやすく解説しているところ
  • 幕末の大きな事件を内部から目撃している
  • 歴史人物との出会い

『幕末紀』での歴史人物たちとのさまざまなエピソードは、フィクションだとしてもおもしろく、心躍らせるような感覚で読み進めることができます。

また、柴田作品でも特有なハードボイルド感漂う歴史小説としても読むことができますよ。

続編の出版が期待される作品

新式銃の普及やフリーメイソンなど、幕末時代を新しい切り口でみていくところが興味深く感じました。

確かに、歴史的事件に都合よく立ち会ったとも言えなくもないのですが、フィクションとして、エンターテイメントとしてみればおもしろいストーリーです。

むしろ客観的に時代の流れをみることができるので、冷静に読み進められました。
(普段は、どちらかの陣営に感情移入してしまうため冷静になりきれないことが多いんです……)

ただし、ドキュメンタリー風にしている分、まだまだ幕末を動かした人物たちの謎は解けていないまま。
きっと続編で解明されるのではないかと期待してしまっている自分もいます。

またしても「柴田ワールド」に引きずり込まれてしまいました。

幕末のクライマックスに向けて、主人公の柴田快太郎と伊達宗城がどんな風に活躍するのかをもっと続きを見たい気持ちにさせられます。

最後に。

柴田哲孝さんといえば、車のラリーに参加したり、アマゾンでピラルクを釣りに行ったり、自分でログハウスを建ててしまったり……。

好きなものや好きなことを全力で楽しんでいるイメージの作家さんです。

私の興味と重なる部分が多いせいか、憧れの存在でもあります。

そんな作家さんが書いた幕末の小説。
私も幕末小説が好きです。

これは、絶対読んじゃいますよね~。

期待に違わない小説でした。
幕末に興味がある人はぜひ一読をおすすめしますよ。

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