虫好きの子の親が読んでおきたい『虫捕る子だけが生き残る』

こんにちは。山内健輔です。

現代社会では、昆虫少年・少女たちの肩身が狭くなっています。

虫嫌いの人には、「虫を触って、気持ち悪い~」
自然保護・環境保全を謳う大人には、「虫がかわいそう~」

せっかく虫を好きになったのに、家の外では虫好きを隠している子どももいるんだとか……。

もし、あなたの近くにお子さんがいるなら、そんな時代に生まれた子どもたちを応援してあげられる大人になりたいですよね。

実は、わが家にも2歳の娘がいて、散歩しながら、セミやカマキリ、トンボやバッタなどを見せています。
最初は、「こわい~」と言っていましたが、近頃ではだんだん触れるようになってきました。

今回紹介する本は、

『虫捕る子だけが生き残る~「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか~』
養老孟司・池田清彦・奥本大三郎 著 (小学館)2008年12月 192ページ

虫好きの子の親が読んでおきたい『虫捕る子だけが生き残る』

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「親」になったら読んでほしい!

こんな人に読んでほしい!
◯小さい子供のいる親
◯昆虫少年・少女だった大人
◯昆虫好き
◯教育にたずさわる人

虫好きな3人の大人たちが雑談をしているような雰囲気で進められる本です。
ただし、雑談しているのは「虫界」では有名な3人。

養老孟司さん
医学者・解剖学者で東京大学医学部の名誉教授。
昆虫にも詳しく、いくつもの著書がある。
箱根にある別荘は「養老昆虫館」として昆虫の標本が保管されている(非公開)。
池田清彦さん
生物学者で早稲田大学・山梨大学の名誉教授。
子供の頃から昆虫少年で、東京八王子の高尾599ミュージアムの名誉館長。
人気テレビ番組にもコメンテーターとして出演している。
奥本大三郎さん
フランス文学者。埼玉大学の名誉教授。
虫関係の本を執筆し、ファーブル昆虫記を完訳している。
日本アンリ・ファーブル会の理事長をしていて、虫キッズたちを育てている。
虫好きのおじさんたちのトーク番組をしているような感覚で、虫好きはもちろん、虫マニアでなくても楽しめちゃいます。
御三方は、教育についても専門家なので、昆虫採集と教育を絡めた話題が論理的でおもしろいんです。
虫捕りは、子どもの教育に必要なこと現代では虫捕る機会が減少していること虫捕りによって得られる体験は現代社会に生きるための能力を養うことなどが語られています。
三人とも立派な肩書をお持ちなので、カタい話を想像してしまいますが、全くそんなことはなく、本当に雑談をしているように話題が展開していくので、昆虫に造詣が深くなくても楽しく読めますよ。

「元」昆虫少年たちである大御所たちの雑談

この本の特徴を紹介します。

  • 虫好きおじさんの雑談(談話形式)
  • 昆虫採集と教育についての考察
  • 3人のムシへの愛が伝わる
  • 子育てのヒントになる
  • 虫捕りの先人たちの知恵
  • 好きなものを語ることで相手にも伝わる
  • 専門的というより一般向け

元昆虫少年のオジサマたちが虫捕りについて真剣に語り合う内容です。
といっても、ただの元昆虫少年ではありません。

この3人が書いた昆虫関係の本だけでも30冊以上は下らないんです。
しかも全員一流の大学の名誉教授。

そんな人たちの「虫捕り」の話がつまらないはずはない!

難しい話や専門的な話はほとんどなく、虫に詳しくない人でも興味深い内容になっていますよ。

虫捕りの感覚は人生に活きる!

ここで虫捕りについて語っている方々は、それぞれの分野での権威だけでなく、虫界でも権威のあるお三方。
その権威も虫捕り経験も豊富な方々が子どもが昆虫採集することのメリットを挙げています。

  • 集中力・忍耐力・観察力・応用力……さまざまな能力が養われる。
  • カン(勘)や感覚が養われる。
  • 虫から発展して興味・感心が広がる。
  • 命や自然への感覚が養われる。
  • 虫捕りは武道に似ている。

とくに幼少期に虫と接することで勘や感覚が養われて、命や自然への畏敬をもつことができると論じています。
もちろん自然のなかで五感を駆使することで、体も丈夫になるんです。

そしてインプット・アウトプット・フィードバックを繰り返すことで成長していく、人間形成の教材になるってこと。

もうひとつ印象に残ったのは、環境や開発への問題提起
虫が減っているのは実感としてあるものの、存在する虫の種類が変わってきたこと、生き物の層が薄くなってきたことが、3人の感覚として語られています。

肩身の狭い虫好きの子の親たちは胸を張ろう!

『虫捕る子だけが生き残る』の感想です。

なによりも感じたのが、3人の仲の良さと虫たちへの愛。

元昆虫少年が活き活きと虫を語ると、とくに虫好きでなくとも「おもしろそう~」って興味をもってしまうんです。
とくに現代社会では、昆虫好きが肩身の狭い思いをしている今日このごろです。

権威のある方々のこういった言葉たちが、虫好き少年たちへの理解、虫への理解を促すことになるでしょう。
そして、虫好きの子どもをもつ親御さんたちには胸を張ってほしいのです。

よく「釣り人に悪い人はいない」なんてよくいわれますが、虫捕る子たちは命の重さを知っています。
自然への畏敬をもっています。地球を大事にします。

ちょっと本のタイトルは極端すぎる気もしますが、内容については納得です。



虫も確かに減っているんだけど、虫捕る子は絶滅危惧だよ」といった言葉が印象に残りました。

最後に。

読後感としては、

若い時分にはあまり好きでなかった「最近の若いものは~」的な内容に共感してしまう年齢になってきたんだな。

と思った自分がいました(笑)

また、今まではあまり昆虫標本には手を出さないようにしていましたが、この本を読んで少し興味をもちました。

読みやすく理解しやすい本です。
子育てにつまづいたときには、一度子どもと一緒に昆虫採集に出かけてみたいと思いました。

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