こんにちは。山内健輔です。
間宮林蔵(まみやりんぞう)は、江戸時代の後期に蝦夷(えぞ)から択捉(えとろふ)や樺太(カラフト)などを探索し、測量した人物として知られています。
その大きな功績と同時に、徳川幕府の隠密(諜報)でもあったといわれています。
今回紹介する小説『林蔵の貌』(りんぞうのかお)は、江戸幕末期の少し前の話。
「文化文政時代」といわれる時期のストーリー。
作者はハードボイルド小説で有名な北方謙三氏。
今回の小説もハードボイルド全開の漢(おとこ)たちが、熱く、冷静に「夢」と「友情」を追っていく物語です。
後に執筆された『黒龍の柩』(こくりゅうのひつぎ)の物語へも続くような作品になっています。
併せて読むとより一層楽しめるはず。
今回もネタバレなしで紹介していきます。
1996年11月(集英社文庫)
蝦夷地をめぐる各勢力の闘いを描いた小説『林蔵の貌』北方謙三著
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ハードボイルドな歴史時代小説を読みたい!
◯北方謙三作品のファン
◯長編の歴史時代小説が読みたい。
◯ハードボイルドな気分
◯幕末への流れに興味がある
北蝦夷に男たちの夢と野望が交錯する!激動する江戸末期、暗躍する水戸、薩摩。南下するロシア。権力者たちの策略の渦の中を、間宮林蔵が駆けぬける…。迫真の時代巨編。(解説・縄田一男)
ですが、会話中心で物語が進行しており、普通に読み進めていけばだんだんと流れもわかるようになっています。
史実を題材にした壮大なフィクション
『林蔵の貌』の特徴は、
- ハードボイルドな時代小説
- 11代将軍家斉の時代
- 豊富な航海シーンやアクションシーン
- 北方領土から琉球までが舞台
- 史実をもとにしたフィクション
- 会話中心で読みやすい
- 蝦夷地を測量した間宮林蔵と仲間たちの物語
- それぞれの組織の男たちが夢を描いたストーリー
江戸時代幕末のちょっと前の話で、この物語が幕末のストーリーに展開していくようになっています。
とくに北方作品のなかで、幕末の土方歳三を描いた小説『黒龍の柩』は、『林蔵の貌』の流れも土台になっているので続けて読むことで一層楽しむことができるでしょう。
もちろん単独で読んでも問題なくおもしろい作品です。
『林蔵の貌』は、政治的闘争に巻き込まれていく間宮林蔵と夢をみた男たちの友情の物語。
それぞれの思惑で動きながらも、目標に向かって友情を育んでいく姿を描いています。
その友情も一見、クールに見えながらも熱く固い絆で結びついている様子が、北方謙三作品の真骨頂なのです。
勢力の争いに巻き込まれる林蔵
幕府・朝廷・水戸藩・薩摩藩・ロシア・オランダの各勢力に商人の利権が絡んで、複雑な情勢の時代。
そんな中、蝦夷地の測量によって、地理や海流に誰よりも詳しい間宮林蔵は、各勢力から重宝される存在に。
林蔵は、蝦夷地を案内するうちに夢を描く男たちに自分の夢を重ねるようになっていくストーリー。
さまざまな立場の者たちがそれぞれの利害を主張するなかで、林蔵は自分の正義をみつけていく姿は読んでいて心が弾む、というか冒険小説を読んでいるような気持ちにさせてくれます。
何を書いても、ネタバレになりそうなので、詳しく書くことは避けますが、テーマは男たちの「友情と誇り」。
蝦夷地に夢を見た人物たちが、誇りを守るために戦う姿が描かれています。
とにかく出てくる人物たちが強くてかっこいいです。
利用されたり、利用したり。守ったり、守られたり。
超大作の長編ですが、場面転換もテンポよく進み、最初から最後まで飽きさせない展開がみどころです。
複雑だが魅力ある人物たちが印象的
最初に『林蔵の貌』を読んだときは、時代に馴染みがないせいか、少し分かりづらいと感じました。
ですが、読んでいるうちにだんだんと敵、味方、各勢力の構造が分かるようになる構成になっているので、そのまま読み進めて大丈夫。
立場の異なる者たちが互いに、それぞれの持ち場で能力を発揮しながら協力していく姿は、ワクワクしながら読めました。
蝦夷地やさらに北へと向かう冒険の描写は、海や船に造詣が深い北方謙三氏ならではのもの。
「波が硬い」という表現は、実際に船に乗る人でないと書けないはず。
とにかく、読んでいるだけでのめり込んで、終わってほしくないような気分になる小説でした。
最後に。
幕末期の少し前の時代のことを「文化文政期」というそうです。
この時代についての知識はほぼゼロで読み進めましたが、わからない分、新鮮に読むことが出来ました。
ロシアとの事件やシーボルト事件などまだあまり詳しく知らないのでちょっと調べてみようと思います。
『黒龍の柩』はこのあとの幕末期を舞台に土方歳三が活躍する小説。
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『林蔵の貌』も『黒龍の柩』も独立した作品ですが、互いにリンクし合っているような記述が多く見られます。
どっちが先でも構わないので、ぜひ一緒に読んでみてくださいね。
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