こんにちは。山内健輔です。
世間には幕末に活躍した戦線組の土方歳三を書いた小説が数多くあります。
最期まで新政府軍を苦しめながら屈することのなかった生き様は、作家からも読者からも人気の人物です。
幕末や土方歳三は、すでに書きつくされたといってもいいかもしれません。
私も多くの幕末小説を読んできました。
ですが!
北方謙三さんの『黒龍の柩』を読んでみると独創的な展開に驚嘆することに。
今まで読んだことのない人物設定とストーリー展開。
ハードボイルドと土方歳三の親和性。
夢を追った男たちのかっこよさ。
史実かどうかはどうでもいい、ロマンのある幕末小説が読みたい、こんな時代小説があってもいい、そんな風に思う人に読んでほしい小説です。
今回もネタバレなしで紹介していきます。
2005年10月(幻冬舎文庫)

北方謙三『黒龍の柩』幕末上級者も唸るストーリ展開がみどころ!
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幕末を読み尽くした人にもおすすめ!
◯土方歳三ファン
◯幕末小説を読み尽くした!
◯ハードボイルドな歴史小説を読んでみたい!
今まで、誰もがしているような幕末の小説とは一線を画す作品。
北方謙三さんは、もとは現代的な作品をハードボイルドに書く作家さんでした。
私も好きで数多く読んできたといえます。
その好きな作家さんが、私の好きな土方歳三を描いていたのです。
読むしかないでしょう!
ということで、読んだらやっぱり、さすがな作品に仕上がっていました。
多くの作家さんが書いてきた幕末モノとは、全く違う切り口でロマンあふれるハードボイルドな時代小説なのです。
ありきたりな展開の新選組、幕末小説に飽きた人にも自身をもっておすすめできる一冊。
オリジナルな時代展開と驚きの人物設定と人間関係に目が離せない小説です。
ハードボイルドと相性ぴったりな土方歳三
新選組副長・土方歳三は、新政府軍に追われる徳川慶喜と蝦夷地に渡り、独立国家設立を目指す。迫りくる官軍を振り払い、男たちは夢を叶えることができるのか。新・幕末歴史小説ここに誕生!
『黒龍の柩』の特徴です。
- かっこいい男たちが登場する。
- 新選組小説というより土方歳三小説
- 読み応えあり、長編(上下巻)
- ハードボイルドな時代小説(創作部分あり)
- 迫力ある戦闘シーン
- 人物設定にオリジナリティ
- 歴史小説というより娯楽(エンターテイメント)小説
『黒龍の柩』は、北方謙三さん以外には絶対に書けない小説でしょう。
新選組隊士たちの人物設定も去ることながら、幕府方の人物、薩長側の人物たちのキャラクターも秀逸に描かれます。
とくに際立つのは、新選組の山南敬助との関係性。
他にも、勝海舟とともに行動する山岡鉄舟や新門の辰五郎親分、島田魁や大石鍬次郎のキャラクター設定と役どころがいい味を出しています。
新選組と同時並行で進んでいく大きな計画。
両方を行き来する土方歳三。
それを見守る近藤勇と沖田総司。
歴史に忠実な小説を好む人には向かないストーリーかもしれません。
ですが、ありきたりな展開に飽きた人には、「こんなふうだったらいいのになぁ~」を巧妙に実現してくれているような作品です。
なによりも、土方歳三の生き方が「ハードボイルド」そのもの。
歴史小説とハードボイルド、土方とハードボイルドがうまく融合された小説で、物語がどう動くのか、幕末に詳しい人でも予想がつかない展開になっていきます。
他にはない展開と人物設定がみどころ!
『黒龍の柩』では、冷静でいながらも熱く、真摯に夢を追っていく土方歳三の姿が印象的。
人に冷たいようでいて、自分の仲間を思う熱い気持ちが胸を熱くさせます。
登場人物との関係性も他の小説ではみられないような組み合わせが、興味を惹きます。
詳細は本を読んでほしいので伏せますが、土方歳三と他の登場人物との関係性も注目したいポイントです。
また、作中には幕末小説に不可欠な徳川慶喜、勝海舟、坂本龍馬も登場します。
彼らのキャラクターも他にはない魅力を感じました。
もちろん新選組小説でおなじみの近藤勇や沖田総司といった顔ぶれと架空の人物を巧妙に絡ませて物語に深みを与えています。
物語展開もみどころのひとつ。
誰もが知っている歴史の出来事をうまく組み合わせて、私たちが想像もできない方向へと導いていくアイデアはさすがとしか言いようがありません。
北方ワールド全開のハードボイルド感と他にはないストーリー展開によって、他の幕末小説とは一線を画す作品です。
北方ワールド「間宮林蔵編」
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土方歳三小説のなかでも名作の部類!
独創的に展開していくストーリーなので、どういう展開になるのか先が読めません。
それだけに、先が知りたくてページをめくる手が止まらなくなります。
多くを書き尽くされてきた土方歳三ではありますが、ロマンのあるストーリーです。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』や富樫倫太郎の『土方歳三』といった、他の小説の歳三と比べて読むのもおもしろそうですね。
この小説で私がいちばん気に入ったのは、作者の創作部分。
きっと作者の遊び心が多分に含まれていると思われる架空の人物とラストシーンには、感動さえ覚えました。
読んでいると、結末が早く知りたいような、終わってほしくないような。
そんな気持ちになる作品です。
最後に。
ストーリーにほんの少ししか登場しない、もしくは全く登場しない人物がいます。
登場しないのに、卓越した存在感と影響力をもつのです。
作者の北方さんは、この黒幕といえる二人の使い方が絶妙。そんな点にも注目してほしいです。
北方謙三さんには、『黒龍の柩』の他にも幕末を舞台にした作品があります。
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どちらも北方謙三ワールドを踏襲した作品です。
『黒龍の柩』といっしょに読むとおもしろいですよ。
(読む順番はどれを先に読んでもOK)
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